何が悪かったのだろうか?
 何度も何度も自問する
 けれど、答えは見つからない

  monologue

<side Joka>

 なにゆえ?
 宇宙の常闇を眺めるたびに去来する、内への問いかけ。
 何が悪かったというのじゃ?
 最善を尽くしたというに。
 現実は、願いを裏切って…
 全てがなぎ倒され、消えていった。
 まぶたを閉じればその光景が思い出される。
 視覚にも、聴覚にも、厭になるほどリアルに。
 その様を『天罰』と形容した者がいた。
 莫迦らしい
 軽い嘲りとともに、闇を睨みつける。
「神はとうに、妾たちを見捨てていたというに…」



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<side Fukki>

 いったい何が悪かったのか?
 常に、思考の根幹にある疑問。
 なぜわしたちは失わなければならなかったのか?
 未来を、故郷を、同胞を…
 最後まで諦めなかったというに。
 切実なる願いは聞き入れられなかった。
 憎たらしい現実と、薄れてゆく希望。
 腹立たしくも、もの悲しい思い。
 誰にこの思いをぶつければいいのだろうか。 
 無常なものよ
 深い嘆息とともに、まぶたを閉じる。
「わしたちには、恨み言を投げつける神すらおらぬ…」



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<side Oheki>

 きっと、何が悪かったというのではないのだろう。
 すべては必然的に起こりうることであり、私たちは既にそれを知っていた。
 無意識のうちに。
 ただ、それが到底受け入れられるものではなかったから、足掻いたのだ。
 あのように醜く、愚かしく。
 静かなる終末。
 それを受け入れたなら、どんなになってただろう?
 この星にいることもなかっただろうに。
 いや…これもまた必然なのか?
 ふと一つの問いが浮かぶ。
 女禍がこの星の歴史を操るように、私たちも誰かに操られているのではないか?
 その考えに、スッと薄ら寒くなる。
「ふ、埒もない」
 その不毛さと、無意味さに一蹴して、上を仰ぎ見る。
 月はなく、星が頭上に広がる。
「美しいものだ」
 この数えきれぬ光のどこかに、私たちの故郷の欠片がある。
 そして、それは新たな星の素となる。
 私たちの思い出が星となるのだ。
「女禍、あなたが望んだ未来とは何だったのだ?」
 孤立し、一人取り残されてまで望んだものとは…
「私はあなたの未来を打ち消すけれど」
 見てみたいとも思うよ。

 呟きは闇へと静かに溶けていった。
 
 
 
 
 
  了
  011104