外に出ると、その真っ青な青空を身体で感じた。 「うわぁ――――・・・いい天気v」 思いっきり朝のさわやかな空気を肺に入れる。 「そうだ!天気も良いことだし、望ちゃんを呼んで桃の試食でもしようvv」 急に思いついたナイス・アイディアに手をポンと打つと、普賢は早速太公望の元へと出かけていった。 今日も平和な仙人界の一日が始まる。
「・・・・で、何で俺達まで招待されてるんだ?」 時間にして午後3時。 「何だ、文句でもあるのか、道徳?」 じろりと、疑問を投げ掛けた者・道徳真君を睨み付けたのは太公望。 「望ちゃんがね、せっかくだから他にも何人か呼ぼうって・・・・。僕はどっちかって言うと2人っきりの方が良かったんだけど」 今回の企画者である普賢が皆に説明し始める。 「いつも思っておったのだ。こんなに美味しい桃をわしが独り占めしていては詰まらぬ、と。皆にもこの美味しさを知って貰い、わしが如何に常々美味しい桃を食っておるかを自慢せねばなるまい!」 にっと子供のように笑って太公望が言った。 「そ。望ちゃんがど〜〜〜〜〜〜〜しても皆を呼びたいって言うから・・・」 「楊ぜん君とかは?呼ばなかったの?」 太乙がピーチティを啜りながら訊く。 「玉鼎とか・・・・・ね、太乙?」 しかしそんな太乙の揚げ足を取るのが雲中子。 「/////ッ、私はそんなイミで言ったワケじゃあっっ」 「楊ぜんは、普賢がイヤだと言うから・・・」 太乙を無視して太公望が言った。 「だって僕、楊ぜんのこと嫌いなんだもん」 「・・・・・・・。」 一同、絶句。 「あ・・・・だから玉鼎も呼ばなかったのか?」 「うん。彼を招待するとくっついてきそうだからね。まったく、何時までも師匠離れが出来ないよねぇ、楊ぜんって」 この場合くっついてくるのは師匠離れが出来ないからじゃない気もするが、誰もソコには突っ込まなかった 「・・・・で、何で私達なんだい?」 更に雲中子が訊く。 「雲中子にはいつもイロイロとお世話になってるからね。そのお礼もかねて。でも1人じゃ淋しいから、他の2人も呼ぼうかって・・・・・ね、望ちゃんvv」 「う・・・うむ///」 (・・・・・・イロイロって・・・・;;;) 何の世話かは、訊かなくても太公望の真っ赤な顔を見れば分かる。 わずかな沈黙。 「そう言えば、最近おぬしのトコロに新しい弟子が来たらしいのう?」 太公望が、桃を手に取りながら雲中子に尋ねた。 「ああ。雷震子のことかい?」 同じように桃を取り、雲中子が答える。 「あ、雷震子っていうのか。俺、まだ会ったことないよな?」 「あれ?そうだったかな。すごく可愛い子だよ。一生懸命でからかい甲斐があって・・・」 「からかうなよ!オマエはっ!!」 聞き捨てならないことを言う雲中子に道徳はすかさずツッコむ。 「太乙も弟子をとったんでしょ?たしか」 「うん。いや〜〜ナタクっていうんだけど、これがまた可愛くて可愛くて・・・vv」 こっちも随分な師匠バカだ。 「もともとは人の子なんだけどさー、イロイロあって、まぁ私が生みの親ってコトになるのかなぁ。すっごく生意気なんだけどね、時々淋しそうだったりして、人間の感情なんて無いみたいに見えるんだけど妙なところが人間みたいで、ホント可愛いよv」 滅多に弟子をとらない太乙にここまで言わせるということはナタクもなかなかすごい。 「僕のトコロの木タクの弟なんだよね」 「おぉ、そうなのか?ではさぞかしパワフルなのであろう」 以前遊びに来たときに会ったことがあるので、太公望はその時の様子を思い出して言った。 「あの2人が来てくれるとナタクも楽しそうだからいいんだよね」 「ほぉ・・・、わしも一度会いたいもんだのう」 「でも望ちゃんはまだ修行中だし、あんまり人に会わないんじゃない?」 「ヌ・・・・・」 普通に話してはいるが、彼らの中で太公望だけが未だ道士だ。 「道徳のトコロの"天化"にもまだ会ったことはないのう・・・」 「天化君も可愛いよねぇ、いぢめ甲斐があってv」 またも雲中子はとんでもないことを言い出す。 「オマエ、人んトコの弟子までいぢめるなよっ!!」 「何を言ってるんだい、彼が私のモノに色目を使うからだろう?まあ、まだまだ私を敵に回すなんて100年早いけどね」 「な、あ・・・・・・っ//////」 誰がオマエのモノだ、と言おうとするが、それは3人に自分たちのことをバラすことになってしまうので言葉に詰まる。
西の空が赤く染まり始め、暖かだった風にも涼気が含まれ出す。 「そろそろ、お開きにしようか。もう日も暮れかけてるし、木タクも帰ってくるかも」 主催者である普賢が立ち上がり、卓の上を片づけ始める。 「じゃあ、今日は有難う。桃、美味しかったよ」 太乙が言った。 「普賢の桃なんてそうそう食えるものではないからのう。わしに感謝せぇよ」 かっかっか、と太公望は笑う。 「ホント、今日は楽しかったねぇ」 「・・・・・オマエはな・・・」 雲中子も期限が良さそうだ。
道徳が、太公望の方を振り返り、真面目な顔で呼びかけた。 「ん?」 「・・・・・いや、その・・・・・・・・、修行・・・がんばれよ」 「?うむ。無理せぬ程度に頑張るよ」 結局、道徳は言葉を濁し優しく微笑い、雲中子と太乙も顔を見合わせて、同じことを想った。 ――――俺達の弟子を、頼むぞ。 空は暗くなりつつあり、一番星が輝いている。 あるとても晴れた日のお茶会。
了 ▼△▼2001/07/27(Fri.)
16:45▼△▼ |