―それは任務の途中、あまりに苛烈なアクマの攻撃に仲間とはぐれた時だった…
「…え…?…」
一瞬…何が起こったのか解らなかった…
アクマ達の攻撃がピタリと止み、そして瞬く間にどこかへと彼らの姿が消えたから…
…けれどすぐにその理由は解った。
…と言うよりも…見当が着いた…そう言った方が正しいだろうか?
―だから僕は溜め息を吐いて…
「……ロード…」
…『原因』である『彼女』の名を呼ぶ。
―コツン…
呼ぶと同時に小さな靴音が何処からか響き…
そして周囲の『景色』が変わる。
先程まで自分がいた『街』から『薄暗い部屋』へと…
その『変化』に振り返るとそこにはやはりロードがいた。
―『決別(わかれ)』の『約束』―
「…ロード、これは…」
そう僕が言おうとした…その時…
「アレン」
ロードが僕の名を呼んで、結果として僕の言葉は遮られる形となった。
「なんですか?」
ロードに名を呼ばれ僕は思わずそう返す。
『敵同士』である筈の僕らが向かい合って…それでのんきに会話を交わすと言うのもなんだか変な感じだが…何故かロードは初対面の時以降僕に対しては敵対的な行動を取らない。
…そして僕は…その『理由』を大体解っている。
…たぶん…ロードは…彼女は既に気付いてるんだろう…
「…ねぇアレン…いつまでそうやってるつもりなの?」
どこか…少し不安そうな表情でロードはそう問い掛ける…
僕の瞳を真っ直ぐに見つめて…
…他人にとっては良く解らないその『問い』。
…けれど僕は…その『問い』の『意味』を知っている。
…否…正確には…
「…やっぱり…キミは気付いてたんだね…?…ロード…」
…予想が着いていた。そう言った方が良いだろうか…?…
「…わかるよ…だって…」
「…だって……」
そうロードは掠れた声でもう一度言う…
「……」
落ちるのは沈黙…暫く待ってもその沈黙は破られず…ロードはただジッと僕を見ている。
そんな彼女の様子に…僕は小さく息を吐く。
…どうやらロードは…彼女は『僕』に言わせたいらしい…
そして言わなければ解放されないのだろう…この居心地の悪さからは…
まるで彼女を僕が苛めたような…責められているような感覚からは…
…イヤ…ロードは実際僕を責めているのかも知れないな…
そう思い…フウと嘆息を吐き…そして僕は諦めて口を開く…
「……『兄弟』だから…ですか…?…」
そうして僕は沈黙を破り…そして目を背けていたその『真実』を口にする。
「…アレン…一緒に帰ろうよ…『イノセンス』があったって『僕ら』は誰も気にしないよ?だって『家族』だもん」
そう言ってロードが僕に手を伸ばす。
「…ロード…僕は『エクソシスト』だよ?」
「ノアとエクソシストは敵同士でしょう?」と続けて告げれば…
「カンケーないよ。アレンはノアだ。僕の『家族』だ。『エクソシスト』なんか止めちゃえばいい。『昔』がどうだったかなんて『僕ら』は『誰も』気にしないよ。…そんなことより…僕は…『家族』と戦う方がイヤだ。僕の『兄弟』が…『兄弟同士』で戦い合う方がイヤだ。…だから…だから…」
「だから」…そこまで言って…そうしてロードはボロボロと涙を零し始めた。
「……『戦い』が…近いんですね?」
…零れたロードの涙…その言動で…僕は大凡察し…
「…伯爵が…ノア達にエクソシスト狩りの指示を出したんですね…?…」
…そう問う。
…そしてその中には当然僕も…『アレン・ウォーカー』も含まれてる…
…だからこそロードはやって来た。
『覚醒しているのにエクソシストを続けている』…この『事実』が伯爵に知られる前にと…
…『僕』が…『14番目』が…『裏切り者』になる前にと…
―ボロボロと零れゆくロードの涙…
…その涙に…『僕』は胸が締め付けられそうになる。
…にしても…さっきの『罪悪感』といい…『兄弟』に目の前で泣かれることがこんなに辛いなんて…
…これでは確かに……
―フウ…
そしてまた溜め息を吐き…
「……ロード…済みません…もう少し…もう少しだけ僕に考える時間を下さい…お願いします…」
そう言って僕はロードに頭を下げる。
―そう『時間』を下さい…
―考える『時間』…『覚悟』を決める『時間』…諦める『時間』…
…そして…喩え一方的にでも…『決別(わかれ)』を惜しむ…その『時間』と…
…その『決別(わかれ)』を『どちら』に対するモノとするのかを…『ホンの少しだけ…悩む』…その『時間』を…
…『僕』に下さい。
「………うん…わかった…それじゃあ今日は帰るから…次ぎ会う時までには『答え』を出しておいてね…」
そう言ってロードは儚げに微笑むとあの可愛らしい形の『彼女の扉』を出現させて帰って行った。
―終わり―
―補足―
この話では『裏切りノア・14番目』の設定が無かったことになってます。
そんなわけで方舟ダウンロードも当然ありません。
そして『14番目』は別に一代限りのイレギュラーではありません。
単に滅多に出現しない。出現パターンの変則的な特殊なノアなだけ…
そんなわけで当然の如く『アレン』は『14番目の宿主』ではなくあくまでも当代の『14番目』。
時間軸的にはアニメの『巻き戻しの街編』のあとからイェーガー元帥死亡前までのどこか…
―あとがき―
…あーなんか設定はあんまり作らないつもりだった割に気が付いたら結構出来上がってました…
…この話は元々は頂いたリクをもとに書いていたのですが…どうにも尻切れトンボな気がして納得が行かず、書き直してる内になんだか原型を止めなくなって結局ボツになりお蔵入りしたモノを、この程引っ張り出してきたモノです。
…それなりに結構気に入ってもいたのでボツにしたまま埋もれさせたくもなくてお蔵入りネタとしてブログでUPでもしようかと思っていたのですが、元々リク小説なのでどうもそれも気が引けて…そんな風に迷っておりましたら丁度企画の関係でフリーを書くことになりましたので、それじゃあもうこれもついでだからフリー小説にしちゃおうと考えてそんなわけでこの程発表と相成りました。
…リク小説として進呈するには微妙に気に入らなかったので、もうフリーとすることでお気に召したらどうぞと言うわけです。
…それでどこが気に入らなかったのかと言うと…なんだか微妙に未完というか『続き』を書きたくなるような誘惑に駆られるような『終わり』になってしまった事が、リクとしては不釣り合いな気がして、それが気に入らなかったんです…(…でも結局書き直した方もやたら長い長編仕様になったんですが…)
まあそんな訳でフリーですので、もし欲しいという奇特な方おられましたら、この様な駄文でも宜しければどうぞご自由にお持ち帰り下さい。
※ちなみにお持ち帰りの際には、『螺旋の館』の名と『RIN』の名前を書き添えて下さい。
そして二次配布はしないで下さい。
それで…サイトへのお持ち帰りをして下さる方…どうしてもとは言いませんが…掲示板にカキコ頂ければとても嬉しく思います。
―それではまたの機会に―RIN―
―ブラウザの戻るでお帰り下さいm(_ _)m
―著作権はRINが有しますm(_ _)m
※『あとがき』の一部にミス発見、修正致しました。(2010年7月30日)
申し訳ありませんが、上記日付より前に『お持ち帰り』下さった奇特な方いらっしゃいましたら、お手数ですが『あとがき』部分のみコピペし直して下さい。
申し訳ないですが、どうぞ宜しくお願い致します。
―螺旋の館・管理人―RIN―