―ティムキャンピーには映像記録機能がある。
 …その『記録(メモリー)』には…当然『僕』の『過去』が残されている…

 …だからコムイさんが初任務に行く『あの時』言った『言葉』で…『それ』は十分予想出来ていた…


 
―心配と信用と― 


 「あっ!アレンくん!ちょっと…」
 …コムイさん?…どうしたんだろう?…
 「…キミが次の任務に行く前に話しておきたいことがあってね…僕の部屋に来て欲しいんだ…」
 …話…任務の前に?…
 …あっ!まさかこの前の…
 ―コンコンッ!
 「アレンです」
 「あっ!アレンくん?入ってイイヨ〜!」
 その言葉にドアを開ける。
 「…コムイさん…話って…」
 …もしかして…そう思いながら…問う…
 「…アレンくん…キミがマテールに行く前に…キミの『過去』を見せてもらった…そう言ったよね…」
 「…やっぱり…その話だったんですね…」
 …そうだろうとは思っていた…
 「…やっぱり…エクソシスト…失格ですよね…」
 …『心の闇』に『種』を植え付けられたエクソシストなんて…
 「…信用…できないですよね…」
 …『何か』切っ掛けさえあれば『伯爵』の『声』と『自分』の『内(なか)』の『闇』の『声』しか聞こえなくなる…
 …そんな…人間…
 「…アレンくん…ティムキャンピーの『記録(メモリー)』にはね、キミの『過去』だけじゃない…クロスの『伝言(メッセージ)』も入っていたんだ…」
 …え?…
 …コムイさんの言葉に驚く…
 …師匠が…
 「…メッセージ…ですか?…」
 …いったい…どういうことだ?…
 「…そのメッセージでクロスは『もしかしたら』とキミの『闇』について危惧していた…でも同時に『それでも』キミなら『大丈夫』だとはっきり言い切っていた…」
 「…師匠が…ですか…?…」
 …それは…本当に…?…
 「…うん…本当だよ…キミはあのクロスがそこまで『心配』して…そして『信用』してる子だ…だから僕も『大丈夫』だと信じてる…」
 …コムイさん…
 「…この前の事は…ちょっと条件が重なりすぎてしまったんだと思う…二人を思うあまりキミの心は悲しみと怒りで支配されてしまった…でもそれは同時にキミが他人の心を思いやることができる優しい子だということ…」
 …コムイさん…
 「…僕は…そんなんじゃ…」
 「…卑下することはないよアレンくん…キミは優しい…そして純粋で…真っ直ぐすぎるんだ…だから時に感情の制御(コントロール)に失敗しそうになることもある…でもそれが悪いわけじゃない…本来感情なんてキミくらいの歳で制御(コントロール)するようなものじゃない…他人のために怒ったり泣いたりするのは素晴らしいことだ…」
 …コムイさんの言葉が『嬉しい』…
 …でも…
 「…でも『僕』は『制御(コントロール)』しないといけないんです…」
 …そう…常に『理性的』であらねばならない…
 …『自制』を『自戒』を『自律』を…忘れてはならない…『それ』を『自覚』していないとならない…
 「…そうだね…でもキミはそれをちゃんと解ってる…」
 …そんな…
 「…口だけです…実践が伴っていない…」
 …そう…実際には…
 「…僕はそんなことは無いと思っているよアレンくん」
 …えっ…なんでっ…
 「…キミは確かにマテールで暴走し掛け…『闇』に『堕ち』かけた…」
 …そうです…それなのになんで…
 「…でもキミは『戻って』来た…クロスが信じた通りに…」
 …あれは…
 「…あれは…運が良かっただけです…」
 …そう…運が良かっただけ…
 「…僕はそうは思わないよ…」
 …え!?…
 「…『過去』のキミは一度『堕ち』かけたら、クロスの『術』に助けられなければ『戻って』これなかった…でもマテールでは違う…キミは本当に『自分』で『戻って』きた」
 …それ…は…
 「…それは…でも…イノセンスが…リバウンドしたから…」
 「…そうだね…確かにそれは一因だと思う…でもそれは切っ掛けに過ぎない…『過去』のキミはそういった切っ掛けがあっても駄目だった…クロスの『術』が無いと…」
 …師匠の『術』…
 「…そしてクロスはキミがもう一人でも『大丈夫』だと…『闇』を『制御』できるし…『堕ち』かけても『戻って』これると『判断』したからこそ、キミを一人で『本部』へこさせた。一人前だと認め、エクソシストになる許可を出したんだ」
 …あっ…そうだ…師匠は確かに言ってくれた…
 「…だからね…アレンくん…僕の話というのは…少なくとも僕はこのことを知っている…そしてキミを信じている…それでもキミが大変なら…必要なようならフォローはするから…だからキミが心配することは何もないということなんだ…」
 「…コムイ…さん……あ…ありが…と…う…ございます…」
 「…気にしなくて良いよ…アレンくん…僕はただクロスに頼まれただけなんだからね…」
 …ちょっとおどけた感じのコムイさんのその言葉に…『僕』はただただ『嬉しく』て…
 「…ありがとう…ございます…」
 …涙が溢れて…止まらなくなった…

                                            ―続く―