「南極仙翁よ、呂望はどうじゃ?修行は捗っておるか?そろそろ辟穀法は終わる頃かのう?」


 
―童子の修行―


 原始天尊は新たに弟子を取ると、その多忙ゆえに、新弟子の殆どの教育は南極仙翁に任せる事にしている。
 約半年ほど前(正確には七ヶ月前になるのだが…)に新たに取った呂望もその例に漏れず南極仙翁に預けられていたのだが…
 …やはり久し振りに自らスカウトしてきた新弟子であるためか…原始天尊は珍しくその子供の事には気を配っている様に南極仙翁には見受けられた…
 「原始天尊様…それが…大した物ですあの子は…一体何処から見つけて来られたのですか?」
 そして実際原始天尊が気に掛けるのも分かると内心では思いながらも、この半年間(仙人であるため時間感覚が大雑把…)のその子の成長振りに思いを馳せ、感嘆も露わにそう問い掛ける…
 「?どういう事じゃ?」
 原始天尊は訝しげに眉宇を顰め逆にそう問い返す。
 「原始天尊様…呂望は胎息法と導引法を半年前(正確には胎息法は六ヶ月半前・導引法は六ヶ月前…)に修め、三月前に辟穀法も修め、現在は煉丹法と存思法に取り掛かっております…房中術に関しましても、あの子ならばとも思いましたが…老師が以前まだ早いと仰っておりましたので、後回しに致しましたが…この様子でいけば、後三月後否二月後位には正式に道士として不老不死の儀を受けさせても大丈夫でしょう」 
 「!?なんと…もうそこまで進んでおると申すのか…」
 南極仙翁の、感慨深げな言葉に、原始天尊は呂望の予想以上の成長振りに目を見張る。
 「はい…此程成長が早い童子はわしも初めてです。つくづく先が楽しみな子です…」
 原始天尊の感嘆の言葉に、南極仙翁はにこにこと相好を崩し嬉しげにそう言った。
 その南極仙翁の様子から、呂望を随分と気に入っているのだという事が見て取れた…

 …それは本来ならば歓迎すべき事である…喜ぶべき事である…

 …だが…真実を知っている原始には…それはどこか心の底から喜べる事ではなかった…

 誇らしげに相好崩す南極仙翁と熱心に修行に励む呂望…
 …二人の様子が微笑ましい物であるからこそ…

 …総てを忘れ…人間(ひと)として十余年の月日を地上で過ごし…己が周りの総てを亡くしても…それでも涙さえ流す術を知らぬ…哀れな始祖…

 …そのあまりに重い真実ゆえに… 

                                  ―了―

 ―あとがき―
 皆様いつもお世話になっております、RINですm(_ _)m
 久方ぶりの封神小説はHP開設2周年記念企画のフリー駄文です。
 というわけですので、この様な駄文で宜しければ、どうぞ欲しい方はご自由にお持ち帰り下さい。
 …スミマセン…折角フリーなのに…ジジイです…
 …つまんないですね…
 …楊ゼンも普賢も公主もいません…
 最初は普賢の出る話だったんですけど…長くなっちゃったんですよね…
 フリーにするには…
 おまけに話しの展開上…どうも連載の方に組み込んだ方が収まりが良さそうだな、と言う事になってしまって…
 …そういうわけで…こちらをフリーにさせて頂きました…(ある意味…余所ではあまり無いという事…では珍しくていいかな?と思いまして…オイ…)

 それでは皆様これからもどうぞ宜しくお願い致します<(_ _)>
  
                   ―それではまたの機会に―RIN― 

…尚暫くはこの駄文は隠し続けます…

 ―用語解説―
 辟穀法:穀物を食べず、キノコや松の実などの野生の食物を摂取する法。 
 胎息法:呼吸法によって、生命活動の気を摂取する法。
 導引法:身体などを屈伸して血脈などの流通を良くする法。 
 煉丹法:金丹などの様々な仙薬を製して服する法。
 存思法:身体の各部に神を想定しそれを観想する法。
 房中術:男女の陰陽の気の交わりによって、身体の陰陽の気のバランスを整える法。
 以上の6つは仙人になるための修行法です(参考文献:道教の本など)

 尚・非常に危険で難しい為、実行に移しても不老長寿にはなれず、下手したら寿命をすり減らして死んでしまうかもしれないそうです。
 ―ですので一般人の皆さんは決して実行に移さないようになさって下さい。
 …というか、絶対にしないで下さい!
 『生兵法は怪我のもと』です。
 上記の方法を試して早死にしてもRINは一切の責任を負いません。





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