―ズドーン!!
 …どこかからそんな音が聞こえた。
 
 それは爆音だった。
 『珍しいな』…シェリルはそう思い馬車の窓から外をチラリと見遣る。

 ―この街はある意味に於いては『平和』で『安全』だ。何故なら『自分達が暮らしている』から…

 …だからこの街ではAKUMAはあまり暴れない。なのに…そう思いつつ馬車の外を見ていると、不意にその視界の端を『何か』が掠めた。


 
―偶然の邂逅(であい)とノアの悪戯(思い付き)―
                        ―1―
  

 白い影が馬車の傍を横切り前方へと駆けて行った。

 ―カチャリ…
 馬車の扉を開けるとシェリルは馬車の外へと出る。

 外へ出てポツリと呟く。
 「……あれは…」
 馬車の横を走り抜けて行った『白い影』。その影が去った方向を見遣って…

 ―『自分』は直接その『相手』を知らない…

 …だが…

 …イノセンスの…『気』を感じた…

 …ならあの白い影は…

 「…アレン・ウォーカー…?…」
 …ロードの『お気に入り』で…『14番目が残した奏者ノ資格』でもある『エクソシスト』の『子供』なのだろうか…?…

 ―ふと脳裏を過ぎった可能性…

 自身の口からポロリと意識せず零れ出たその名に、シェリルは『もしそうならば』と考え…口角を微かに歪めて嗤った。

                                       ―続く―