《…『コロセ』…『コロセ』…》
 
 ―聴こえる『声』は…酷く甘美で甘やかで…抗いがたかった…
 ―内容の物騒さも…目の前にいるのが『誰』なのかも…どうでも良くなる程…

 ―この時の『オレ』は…『正気』を失っていた…

 ―…そう…『その声』が…『オレ自身』がずっと抗い続けた…『声』と『衝動』であるということさえ忘れる程に…

 ―この時の『オレ』は…『普通』ではなかった…


 
―灰色道化人形 マリオネット 


 …ああ…何故…こんなことになったのか…
 …千年公…あんたはあんたを『裏切った』オレを許さないだろう…
 …『殺そう』としておいて…『本当』は『違う』なんて…
 …『オレ』の『意志』じゃないなんて…
 …きっとあんたは信じないし…
 …それに…
 …どんどんオレが『オレ』でいられる『時間』が短くなっているような気がする…

 …『ノア』といる時には『イノセンス』が囁く…
 …『殺せ』…『殺せ』と…
 
 …『エクソシスト』といる時には『ノア』が囁く…
 …『殺せ』…『殺せ』と…

 …『イノセンス』と『ノア』が…『オレ』を『白』と『黒』に染め上げて…『灰色』の『人形』に変えようとする…

 …嫌だ…嫌だ…『オレ』は『オレ』のままでいたい…操られたくなど無い…
 
 ―しかしその『想い』さえ…既に『彼の存在(モノ)』の思惑の内…

 …『イノセンス』と『ノア』…どちらか片方のみならこんなに苦しくなかったのに…
 フッと浮かんだその考えに…

 …どうせ『自分』は既に『裏切り者』なのだと…そう考えて…

 ―そうして『彼』は『決意』する…

 ―既に『自身』が『正気』などでは無いことに気付かず…
 ―『狂う』ことを『恐れて』…

 ―一見『正気』に見える…『彼』は…

 ―『灰色』の『呪い』に蝕まれし…『神』の『道化人形 マリオネット』…

                                       ―終わり―