―木ノ葉の光―
―ヒナタ編―
―……ああ…また…あの日の夢……―
ヒナタの灯火―序―
………………
…「……ど…どうしよう…どうし…ウッ…ウゥ…」…
…暗く深い森の中…幼い…3・4才位の少女が独りその場に座り込んでいた…
…そして泣きそうになった…その時…
…「そこでなにしてるんだ?」…
…どこからか声が聞こえた…
その声に少女は顔を上げ、しかし何故かそこに座り込んだままキョロキョロと辺りを見回し…
「…だ…誰かいるの…?…」
…そう…不安そうな様子で誰何の声を上げる…
「ここだよ」
…さっきの声がもう一度…今度は『それ』がどこからか分かった…
…そして『それ』は頭上からのモノで、そちらを見上げてみれば、其処では小さな影が木の枝に立ってヒラヒラと手を振っていた。
…そしてその影は…「ヨイショ」…と小さなかけ声と共に降りてきた。
…影が枝から飛び降りて目の前に降りてきたその時…
…少女は確かに見た…一瞬ではあったが…金色の光を…
…だがそれに反し…目の前に降りてきたのは…
…少女と同じ年頃か或いは少女よりも幼いようにも見える…だがどこかしっかりした様子の…少女より小さな…黒い髪に碧い瞳そして黒い着物を着た少年だった…
「おまえどうしてこんなトコで踞って泣いてんの?この森は…えっと…部外者立入禁止?(だったけ?)の森の筈だよ?」
少年は少女の前に身を屈め、少女の目を見てそう問い掛けた。
「…う…あ…あの…修行してて…でも…途中で…大きなトラが近くに来て…気付かれないように、木の上を通って逃げたんだけど…そしたら全然知らない所に出て…トラはいなくなったけど…どうしようって…思ってたら…その…足を滑らしちゃって…」
「…落ちて足を痛めたのか…」
少女のしどろもどろといった説明を聞いて、少年は嘆息混じりに呟いた…
「…にしても…その説明じゃ…そんなには移動してないよね…」
何かを考えながらの少年の呟きに…少女は頷く…その少女の様子を見て少年は更に続ける…
「…この近くで…ついうっかり入り込んじゃうくらい近い森(…たぶんだけど…)…確か一番近いのは『日向の森』だったっけ?…そう言えば『日向』にはボクと同い年の女の子がいるってじいちゃんが言ってたっけ?…(…ヒアシおじちゃんの娘で…ヒナタだったけ?…)…確か……あれ?じゃあおまえ『日向』の娘?」
「…う…うん…わたし…日向ヒナタって言うの…」
ブツブツと何やら考え込んだ様子で一人俯き呟いていた少年の様子に呆気に取られていた少女=ヒナタは不意に顔を上げ問い掛けてきた少年の言葉に頷いて返した。
「…そっか!(やっぱりな)じゃあボク送ってくよ、『日向』の家なら知ってるし!」
「…え…でも…」
「いいから!あっ!足…まだ歩けないか…これじゃ…うーん…そうだっ!」
そう言って少年はヒナタに手を差し出したが…すぐにその足の事に気付き、少年は足の様子を少し見て…そして暫し何かを考えていたかと思ったら何事か思い付いたのか急に声を上げそして…
…目にも止まらぬ速さで印を組むと少年は『変化!』と唱え…
…次の瞬間、煙と共に其処に現れたのは黒髪碧眼の青年の姿だった…
「…足痛いんだよね…じゃあおんぶじゃなくてだっこの方がいいかな?(…ボクもおんぶってよく分からないし…)」
…とそう言って青年に変化した少年はヒナタをヒョイと軽々と抱き上げて…「…じゃあいくよ!」とヒナタにまるで安心させるように、微笑みかけると、瞬身の術でその場を立ち去った……
……それが…日向ヒナタと『彼』の出会いだった……
………………
―……あの子…どこの子かな…父上は知ってるみたいだったけど…
…結局教えてくれなかった…
…「…何れ分かる…」って…言って…
―日向ヒナタがこの少年と次に出会うのは…これより数日後…
…そして本当の意味での出会いは更に数年先の事となる…
―…しかし…この出会いこそが、紛れもなくヒナタにとっての始まりの出会いだった…
―続く―