突然、現れた。
悠久の眠りを妨げた『ヒト』。
hope against hopes
「そうまでして守りたいの?」
眠りからさめた仙人は傍らに座る居候者を細目で見つめてくる。
「どの道滅亡でしょ?どうしてそんなに泣くんだい?」
約束?
それとも信念?
「そなたはあれの夢に少し影響を受けすぎてるようだな。」
誰がそうさせたんだか…と言わんばかりに欠伸をする仙人に居候はちらりと視線を投げかけた。
「そのために、生きてきたから。」
居候者は遠くを見つめた。
長い、長い時間。
繰り返されてきた歴史。
消え去った無数の思い。
すべてがのしかかって来る。
「生きるということ。己の存在意義の確認。己のカタチの存続。」
そのために繰り返されてきた歴史…。誕生と滅亡。
「変わらないのにね。変わることを望んでいる。」
「変わらなければ、変えられない。あれは判っていない。」
「だから生きているの…?」
彼女に、教えるために。たった一人。
視線がふと交わる。
眠たげな瞳と何も移さない瞳。
その目がふと揺れ動いた。
異様な気配の動きが広がる。
すべてが動き出す証が。
「そうかもしれぬ、な。」
居候者は面前に聳え立つ異相の山を見上げた。
「そろそろ時が来たようだ。」
「行くんだね。」
音もなく立ち上がった居候者はお尻の埃を払うと仙人の方を向き直った。
「『また』会うとしよう。」
「めんどくさいけどね…。信じてみるよ。」
その言葉に居候者の目が始めて感情を映した。
「望み薄き希望を持つヒトに希望を……。」
歌うようなその声に居候者は目礼をした。
そして、時は流れ…。
「希望どおりじゃないけれど…。」
目に隈を作った仙人は夢の不法侵入者をどこか懐かしげに見つめいていた……。
END
RINさまの38000ヒットキリリクSSをお送りいたします。
PC不調に付きなかなか書くことができなくて申し訳ありませんでした。
リクエストの王奕ですが…。太上老君が出張ってますね。
王奕が太上老君に何故接触を図ったのか?一見すべてに無関心な仙人に。
太上老君の悟りきった心の中にあるわずかな望にすべてを賭ける最初の鍵があったのではと
思っています。
短い話ですが気に入っていただけるのなら幸いです。