「…そろそろか…」
 そう言うと少年は空を見上げる…

 
―星を見るもの―
 
 「…兄様…どこ…どこ行っちゃったの?…兄様…」
 少女は夜中に不意に目を覚ました、隣で寝ている筈の兄の姿が無いのを知って少女は急に不安になった…
 少女が寝床から抜け出してみると、兄が寝ていた筈のそこはすっかり冷え切っていた… 少女の不安は更に増し…少女は泣きそうになるのを必死で堪えて兄を捜す為に包(パオ)を出た。
 
 少年は星を見るのが好きだった…妹を寝付かせてから星を見るのが彼の習慣だった…
 星を見るのに夢中になって時間を忘れるのもよくある事だった…
 「…兄様…どこ?…兄様ぁ…」
 「妹々、僕はここにいるよ」
 自分を捜す妹の声に気付いて、少年は急いで妹を捜した…
 
 「兄様!兄様!兄様ぁー」
 兄をようやく見つける事が出来た少女は、兄の首にしがみつく様に抱きついてそう叫んだ。
 「兄様どこ行ってたの?目が覚めたら兄様がいなくて…なんだかとっても恐かったのよ」
 座り込んで自分を抱き留めてくれている兄の顔を覗き込んでそう言うと、兄は優しく微笑んで少女の頭を撫でて言った。
 「恐い思いをさせてごめん…僕はここにいるから大丈夫だよ…」
 「うん!!!」
 兄の言葉に安心し、少女はにこりと笑って頷いた。

 「ねぇ兄様ー何してたの?」
 兄を見つけ、優しく抱き留められて安心した少女は不思議そうに兄に問い掛ける。
 「星をね…見ていたんだ…」
 不安な思いをさせてしまった妹の頭を安心させる様に何度も撫でながら、少年は空を見上げ、そう答えた。
 「お星さま?」
 「うん…もうすぐだし…妹々も一緒に見ないかい?」
 「お星さま?もうすぐって?なぁに?ねぇー兄様ー」
 こんな時の兄は少し意地悪だと思いながら、裾を引いて少女はねだる…
 不思議そうな顔をして、何度もねだる妹を可愛らしいと思いながら、少年は微笑む…

 草原に寝転がる為にと用意していた敷き布を置いてある所に妹を連れて来て座らせ…
 寒いといけないからと、余分に持ってきていた上着を妹の肩に掛けた時、それは始まった…
 
 「わぁーきれぇー」
 夜空を流れる無数の星々に少女は感嘆の声を上げる…
 「兄様!きれい!ねぇ兄様これなぁに?知ってたの?ねぇねぇー」
 それを夜空を指差し、兄の裾を何度も引っ張って少女は問う…
 「あれは流星群って云うんだよ…」
 始めて見る流星にはしゃぐ妹を微笑ましく思った瞬間(とき)…不意に少年は不思議な懐かしさを感じて押し黙る…
 「ねぇ…にぃさまぁー…どうしたのぉー…」
 優しく笑っていたのに、急に黙り込んだ兄に少女は再び不安を感じ泣きかけになりながら兄を揺さ振る…
 「大丈夫だよ…少しぼうっとしちゃって…ゴメン妹々…」
 ひっくひっくとしゃくり上げる妹に気が付くと少年はそう言った。
 「…うん…」
 少年の言葉に少女は安心し泣きやみ、頷いた。

 「ねぇ…兄様…知ってたの?」
 「星を見てたらね、分かったんだ…だから…」

 …星を見ていると…奇妙な懐かしさと…不可思議な感覚に襲われる…
 …それでも…少年は星を見ずにはいられない…
                            ―終わり―
 ―あとがき―
 ああ…済みません…遅くなりました…これホントは獅子座流星群記念企画だったのにー
 うぅ…ドンドン予定がずれる(T_T)
 今回は敢えて作品中で名前を書きませんでした…