……『俺』が目を覚ますと傍らで千年伯爵とロード眠っていた。
「…こいつら……」
『俺』は二人を軽く揺さぶる。
「おーい、起きろ〜」
「……ふぁ〜」
「おはようございます……14番目起きたのですね」
「ああ」
「良かった。君、3日も寝てたんだよぉ?」
「3日か……ふぅん……疲れたからなぁ、って二人は付きっきりで『俺』を見てたなんて馬鹿なこと無いよな?」
『俺』は微笑を浮かべつつ訊いてみた。
「付きっきりと云うわけにもいきませんがほとんどは」
「僕は付きっきりだけどねぇ」
「……あんたらすげぇや」
「だって家族だもん」
その言葉を聞いた『俺』は何故か頭痛を覚えた。
「……そうか」
「では我輩、少し出掛けてきます」
千年伯爵は部屋を出ていった。
「……記憶、感情」
『俺』は呟いた。
「へ?」
「記憶と感情が、欲しい……違うな、過去が欲しい、感情が必要だ。」
無性に思ってしまった。忘れたことに意味があろうと、無くしたことに意味があろうと、欲しかった。
「自分の本当の姿を思い出して、年を思い出して、これまでしたことを思い出して、これからしたいことを思い出して……『俺』に戻りたい。笑って、泣いて……過ごしたい」
「14番目……」
「必要なんだ。話をするのに、表情を作るために、欲するために、欲されるために、拒絶するために、拒絶されるために、生きるために、死ぬために、生かすために、殺すために、生かされるために、殺されるために、傍観するために、関連するために、好くために、嫌うために、好かれるために、嫌われるために、憎むために、憎まれるために、喜ぶために、楽しむために、笑うために、泣くために、哀れむために、蔑むために……必要なんだ。」
「14番目……」
「…なぁ、ロード………何で感情が薄いんだろうな。何で何も覚えてないんだろうな…

…何で『私』は創られたんだろうな…

何も分からない」
そう言った14番目はおかしかった。だがしかし、ロードはそれに気付かない振りをして上体を起こしている14番目に抱きついた。
「ロード……?」
「大丈夫だよ。14番目にはちゃんと感情があるよぉ?」
「……」
「無いんじゃないんだよ?それじゃ駄目なの?」
「…………」
「今悲しんでるでしょぉ?」
「……そうだね。でもね……」

それは……




短いけど

短くても……





ロード、君と伯爵のおかげだよ。

    ―END―