………………………


           …… Accident 
                     Or 
                      Necessary ……


                             ………………………




 ―…ちょっとキツイ任務とかがあったり…
 …他にもまあ…諸々の事情で精神的にやばそうになると…
 …オレはいつもある場所に行く…

 …其処は…里から少し外れた丘の上…
 …但し…色んな事情で里人は滅多に近付かない処…

 …オレの先生が…ここから里を見るのが好きだと言って…
 …よく任務後にオレ達を連れてきていた処…

 …其処にオレはヤバくなると頭を冷やしにいく…



   
………………………


       ―…キンノナゴリ…―


              ………………………




 …この日もそうするつもりで…
 …任務後に其処を訪れた…

 …するとこの日はいつもと違った…

 …先客が其処にいた…

 …暗部装束を纏った…暗部にしては…小さな先客が…
 …其処に座り込んでいた…

 …パッと見た感じ…隙はまるでなかった…
 …オレのことにも気付いてたみたいで…

 …はっきり言って…凄いって思ったね…
 …どう見ても10才ぐらいにしか見えないのに…
 …一体この子は何者だろう?って思った…
 …なんでか…不思議と惹かれて…興味を持った…

 …何年ぶりかな?…この感じ?…随分と懐かしい…なんでかは分からないけど…

 …だから決めた…この子とお近付きになっちゃおうって…

 …それで…色々話し掛けて…
 …だけど…あんまり…覚えてないんだよね…
 …何故だか…
 …いつの間にか忘れちゃったみたいで…


 …そして何故か…
 …あの日…上忍になったあの日…慰霊碑の前で見つけた『ソレ』…
 …一本の金の髪…
 …慰霊碑に行く途中で…遠くから見た一瞬の光…
 …それを見るまですっかり忘れていた…
 …あの少年のコト…
 …完全に思い出したワケじゃなかったけど…少しだけ思い出した…あの日のコト…

 …どうして忘れていたのかは…たぶん特殊な忘却の術でも使われたんだろうけど…
 …問題なのは…
 …どうして思い出したのか…

 …たぶん…あの金の髪は…『あの子』のモノなんだろうけど…

 …分からないのは…どうしてあの子の髪を見て思い出したのか…
 …あの子が何か関係あるのか…
 
 …それに…どうしてあの子の髪が慰霊碑の前に落ちていたのか…
 …あの子はたぶん…慰霊碑のことなんて知らない筈なのに…
 
 …行ったこと…ない筈なのに…


 …そうして…初めてあの子と会話した日の次の日…
 …あの子に…下忍認定のサバイバル演習の後で聞いてみた…

 「…ナールト…お前前に此処に来たことあるかい?」
 「……へ?…なんだってば?それ?オレってばここにくるの初めてだってばよ?」
 「…ふ〜ん…そうだよね…でもオレここでお前を見たことがあるんだよね〜」

 …ナルトの返事は予想通りのモノだった…
 …だがオレは妙に気になって…カマを掛けてみることにした…

 …オレが実際に見たのは…
 …金の光と金の髪…
 …でも…

 …ナルトを見たと言ってみた…
 …まあ実際…この里で金と言ったらナルトだしねぇ〜…
 

 …でも…オレのはったりに対するナルトの答えは…

 「…はへ?…変だってばよそれっ!だってオレ来たことないってば!カカシセンセイの見間違いだってばよ!」
 …まるで変わらなかった…

 …『此処にナルトが来たことがある』その可能性を…
 …僅かな余地さえ挟まずにはっきりと即座に否定した…
 
 …それがかえってオレには奇妙に思えた…
 …自分自身の記憶違いの可能性を、ナルトは即座に、否定したのだから…
 …思い返して、考えてみることさえしなかったのだから…

 …そうまるで…『ナルトが此処に来てはいけない』かの様に…
 …そして事実それと似た状態であり…
 …それ故にナルトは『慰霊碑』のコトを知らされてはおらず…
 …恐らく事実…ナルトは此処どころか、この付近一帯に立ち入ることさえ知らず出来ない状態だった筈の…
 …ナルトの知らない筈のこの事実を…

 …まるで…

 「…ナルト…いいんだよホントの事言っても…オレは知ってるからさ…」

 …知っているのかも知れないと…
 …この時不意に思った…

 「…なんのことだってばよ…」
 …ナルトの声が僅かに低くなった…
 「…知ってたんじゃないの?この慰霊碑のこと…この慰霊碑にナルトのりょ…」
 …心なしか低く下がったナルトの声に…やはりと思った…
 「知らないってばよー!!知らないってばよー!!」
 …そうしてナルトは…
 …ナルトの叫びが…
 …言いかけたオレの言葉は遮って…
 …泣きながらナルトは走り去っていった…

 …言ってはいけないことを言ってしまったと…酷く後悔した…

 …喩えそれが事実であっても…言ってはいけなかったのだ…

 …少しでもあの子に心を開いて欲しかった…
 …昔出来なかったことを少しでもと…
 …昔出来なかったが故のその空白を少しでも埋めたいと…

 …『…もしも…あのまま時が流れていたら…』…
 
 …『…或いは…もしもオレが『あの時』もっと強くて…先生の願いに応えるコトが出来ていたら…』…
 
 …オレ達はどんな関係を築いていたんだろうと思うと…

 …いつの間にか止められなくなっていた…

 …この子はオレに残された最後の…
 …『家族』になる筈の…
 …存在だったのだと…

 …気付いてしまったから…

 …嗚呼…済みません先生…
 …オレはまた間違えてしまいました…

 …やはり…オレはまだナルトに会うには早かったのかも知れない…
 
 …『あの子』の心を暴き立てる権利なんか…
 …オレには無いのに…


 …この後…気まずくて…ナルトにはどうにも話し掛けづらく…
 …どうにかしたくても…いつも…失敗していた… 

 
 …しかしこの時のカカシはまだ本当には解っていなかった…
 …カカシがしてしまったことの…
 …その本当の罪深さを…


                                  ―終わり―