黒い髪の年の頃16・7才位のウェイトレス姿の少女が一人街道を小走りに駆けて行く。 少女の目指す先は…丘の上に見えるこぢんまりとした古びた館… その館は彼女等の幼い頃からの遊び場だった… 少女が玄関の扉を開けると、コトコトという音と共にキッチンから微かに柑橘系の甘くさわやかな香りが優しく匂うのを感じて、少女は此処に確かに彼女の捜している人物が来ているのだと確信を持った。 奇蹟のパテェシィエ―1― 緩くウェーブの掛かった長めの髪を無造作に一纏めに束ねたエプロン姿の、年の頃15・6才の少年がはたきを持って応接室の掃除をしている時の事だった。 「バレン!バレヌゥスー!」 キッチンの方から自分を呼ぶ聞き慣れたその声に、バレヌゥスはどうしたんだろうと思いながら、取り敢えずはたきを置き返事をしながらキッチンに向かう。 キッチンに着くとそこにはやはりバレヌゥスの予想通りに黒い髪を肩口で切り揃えた、赤い瞳のウェイトレス姿の少女が少し不機嫌そうな様子で立っていた。 「やあテミスどうしたんだい?君がこの時間帯に此処に来るなんて珍しいね」 バレヌゥスは普段この時間ならウェイトレスのアルバイトに勤しんでいる筈のほぼ同い年の従姉妹アルテミスににっこりと笑んで話し掛けた。 「それはこっちのセリフよ!いつもならこの時間は王宮の料理長の所にいるのに、どうして此処にいるのよ!」 そんな従兄弟の様子に微かに眩暈を感じながら、アルテミスは言う。 「ああ!それはここ最近滅多に此処に来てないから、久し振りに掃除でもしようかなぁって思って!」 呑気にバレヌゥスは言う。その言葉にまたもアルテミスは脱力する。 ハッキリ言って不機嫌な彼女を前にして、自分のペースを崩さずにいられる人間などゼフィーリア広しといえど、そう多くはいない… バレヌゥスがその数少ない一人である事は幼い頃からの付き合いで十二分に知ってはいたが…それでも力が抜ける事にかわりはない… …しかし彼女は急いでいた… 「バレン、『女王』から伝言よ、『すぐに来なさい』って…」 だから兎に角、さっさと用件を伝えてしまおうとそう言った。 「えっ…それって…僕に?何の用かな?」 不思議そうな顔をするバレヌゥスにアルテミスは素知らぬ顔で… 「さあ?行けば分かるでしょ!それじゃあ、わたし急いでるから!」 それだけ言ってさっさと帰って行った… 「…テミス…あれは…知ってるな…絶対…」 アルテミスが出て行った後…ポツリとバレヌゥスはそう呟いた… ―続く― |
―あとがき― 螺旋:皆さんお久し振り、螺旋よ(^_^)v RINの奴がまた逃げ出したから、私が代わりに来たのv L:あら?螺旋じゃない!RINの奴は? 螺旋:あら、L、RINなら逃げたわよ♪ L:あー、またわざと逃がしたのね! 螺旋:うーん…だってなんかやたら疲れ切ってたみたいだったから… ちょっとだけ哀れになっちゃって♪ …いまあいつ一寸大変みたいだし… L:ああ…そう言えば…何だか色々忙しいみたいな事言ってたわね。 少し前にお仕置きした時に… 螺旋:そう!それ思い出してね! だからちょっとよれよれになってるあいつ見て可哀相になっちゃったの… L:それで…まぁたあいつに無駄な情けかけたの? 螺旋:まさか!わたしもそこまで甘くないわよ♪ L:じゃあvやっぱり何か企んでるのv 螺旋:イヤァネv企んでるだなんてv フフv……実はね…ゴニョゴニョ…(螺旋がLに耳打ち中) L:あらvそれ楽しそうv 螺旋:そうでしょv L:ねっねっvその時はあたしも混ぜてねv 螺旋:勿論v最初からそのつもりよv L:クスッv楽しみねv ―そうして二人?はこの上なく物騒な笑みを浮かべて乾杯を交わした… ―幕― …………………………………………………………………………………………………… RIN:…どうも…皆様こんばんは、RINですm(_ _)m あの二人?が酒盛りを始め、 こちらから意識がそれてくれた様ですので…ちょっとだけご挨拶をと思い… 最もすぐに切り上げますが…(…見つかるとどんな目に遭うか…) えーと…前書きにも書きましたが… この話は『スレイヤーズのドキドキ!バレンタイン!』 (以下ドキ!バレ!)の関連エピソードになります。 タイトルからもお解りになると思いますが、 『ドキ!バレ!』中にて名前だけ登場しました、 ゼフィーリアの伝説の神官『バレヌゥス=ティン』の奇蹟に関する物語です。 物語の時代設定が千年前の降魔戦争期である為リナ達は出てきませんが、 ミルガズィアさんやゼロス等の千年前から存在しているキャラは登場します。 それではここまでお読み下さり有り難うございました<(_ _)> ―それではまたの機会に―RIN― |