………………………


           …… Accident 
                     Or 
                      Necessary ……


                             ………………………




 ―…里外れにある丘の上でオレは座り込んでボーっとしていた…
 …此処でこうやってボーっとするのはオレの殆ど日課で…
 …いつものことだったから…

 …でも…この日はいつもと違った…

 …誰も来ないと思っていたこの場所に里のヤツがやってきたから…

 …そいつの印象は…一言で言えば…変なヤツ…

 …オレの後ろから話し掛けてきたソイツ…
 
 …別にオレが背後をとられたわけじゃない…
 …隙はみせはしなかった…

 …ただ…でも…何となく…この時のオレは振り向きたくなかったから…

 …なんでだかなんて…知らないけど…


 
  ………………………


       ―兆し―


      ………………………



 「…君は誰?…どうしてこんな処に一人でいるんだい?」
 …オレの背後に立ったそいつは静かにそう言った…
 「…オレ?…オレは…」
 …名前を問われて…オレは少し戸惑った…
 …だって…これまで一度も『オレ』に名を問うヤツはいなかったから…
 …『オレ』は…表では…ある意味誰もが良く知る『有名人』で…
 …そして…嫌われ者…
 …そして…暗部での『オレ』は…
 …そもそもあまり他人とは関わらない…
 …任務で偶に他のヤツと組むこともあるけど…
 …『オレ』は少し特殊な立場にあると認識されているらしく…やはりあまり『オレ』に関わっては来ない…
 
 …だから『オレ』は…名前を訊かれたことはなくて…
 …暗部用の名前は一応あったけど…
 …そもそも…存在自体が極秘の暗部が名乗って良いのかとか…
 …そう言ったことやらなにやらでオレは少しばかり混乱して…
 …その為に黙っていたら…

 「…教えてくれないの?」
 …なんだか少し悲しそうな様子で…そいつは問い掛けてきて…
 …そのそいつの様子に…オレは…
 …なんだこいつ?変なヤツ…
 …そうオレは思って…そして少しだけ…くすりと微かに笑んだ…
 …勿論そいつには気付かれなかったけど…

 …そしてオレは微かに肩を竦めて…
 「………この格好見て分かんない?…オレ一応暗部なんだけど…」
 …少し呆れた様子を見せてそう告げる…
 「大丈夫vオレも暗部だからv」
 「…はあ…何が大丈夫なんだか…」
 …オレの言葉に対し…気のせいか…なんだかやたら嬉しげな様子のそいつの言葉に…
 …オレは更に呆れた様子で嘆息混じりに呟いた。
 「…で?何をしてるんだい?…名前は無理でもそっちならいいだろう?」
 …なんだかやたらと馴れ馴れしいそいつの言動に…何故かオレは妙な…でもイヤじゃない…そんな不思議な感じがして…
 「…まあ…任務じゃないから別にいいけど…」
 …こういうのが照れくさいって言うのかな…などと…自分の感情を分析しながら…
 「………」
 …少しだけ瞑目して考え…
 「…言いたくないなら…無理強いはしな〜いよ…」
 …どこか痛みを隠した様な明るい声に、押されるような形で…
 …オレは…話し始めていた…

 「……考え事…父さんのコト…」
 …いつもなら…絶対人にはしないような話しを…
 「…君のお父さん?」
 「…うん……ここさ〜…オレの父さんの気に入りの場所だったんだって…昔じいちゃんが教えてくれてさ…だから時々ここに来て考えるんだ…どんな人だったんだろうって…オレ…父さんのコトほとんど知らないから…九尾の時に…死んじゃったから…」
 …そう…死んじゃった…オレに九尾を封印して…オレをおいて…
 「……そっか……九尾のこと…憎い?」
 …ニクイ…ニクくない筈がない…
 「……ニクイよ…でも…」
 …でも…ニクイのは…九尾だけじゃない…
 「…でも?」
 …なにもかも…すべて…
 …でも…それでも…『オレ』は…

 ……やっぱり……

 「…どうにもならないじゃないか…」
 …どうすることもできない…

 …いっそ…ニクシミだけなら良かったのに…
 …それなら…こんな風にクルシクなかった…のかな?…
 …それとも?…

 …ワカラナイ…

 …ワカラナイ…
 …だから…
 …どうにもならない…

 「…んー…そうだね………君は大丈夫かな…」
 何かを考えるような様子で言われたその言葉…
 「…なにが?」
 …それが全然意味が解らなくて…
 「…負の感情に負けない強い心を持ってるみたいだから…」
 …問い掛けに…返された言葉はますます意味不明で…
 「…あんた…変なヤツ…」
 …オレはまたくすりと笑う…
 …こんなことは珍しい…

 …ああ…わかった…この不思議な感覚…
 …きっと…『これ』が『ナツカシイ』っていう『モノ』なんだ…
 …あれ…でも…なんでだろう?
 …それまでは分からない…

 …その内分かるのかな?
 …そう思っていた…

 …実際…会話が続く内にわかった…

 「…ホントだよ〜…君に比べればね〜オレなんて全然ダメなんだよ〜」
 …切なそうな様子で話し始めたそいつの話でわかった…

 「………」
 …最初はその少し重い雰囲気に押され…黙って聞いていた…
 「…いい大人が…いつまでもグジグジしてさ〜…もう情けないったら…」
 …なんの話しなのかわかっていなかったから…
 「………」

 …そいつが『誰』なのかわかっていなかったから…
 「…ここは…オレの先生が好きだった場所で…よく先生はオレ達をここに連れてきてくれたんだけどね…オレの先生もね…君のお父さんと同じで…4年前の事件で亡くなったんだ…生まれたばっかりの子供がいたんだけどね…結構色々あってその子大変なみたいなんだけど…オレは…その子に会うのがつらくってね…どんな表情(かお)して会えばいいのか…正直分からないんだ…」
 …尤も…その話しを聞いて…イヤでもわかった…
 「………」
 …理解した途端…さっきとは別の意味で不思議な感じになった…
 …頭の中がグチャグチャで…眩暈がして…
 …胸が苦しくて…息が出来なくなって…
 …なにがなにやらワカラナイコトだらけで…コンランして…
 …まともに考えることもできなくて…
 …こんなコトはハジメテで…

 …オレはこの日…ハジメテ…『ナミダ』を流した…

 「…ハッハ…いい大人で…しかもいっぱしの忍者が…しかも暗部がさ…情けないだろ…」
 …オレの様子にはまるで気付かない様子で『そいつ』は自分自身を嗤う…

 「…まえ…」
 …殆ど無自覚に…オレの口から零れた言葉…
 「…っえっ?…なんかいった?」
 …その言葉を聞き逃したのか…それとも単に意味を受け取り損ねたのか…『そいつ』は聞き直してくる…
 「…名前は?」
 …もう一度…今度ははっきりと…自分の意志で…そう口にする…
 「…えっえっ?もしかしてオレに興味示してくれた?」
 …なんだか妙に嬉しそうな『そいつ』…今度は気のせいではないと思った…
 「…あんたの師匠…どんな人だったの?」
 …『そいつ』に構わず…オレの口からは…ただ淡々とした様子で言葉が零れていく…
 「…へ?先生?何?先生に興味があるの?」
 …興味…コレは…そんなモンじゃない…
 …そもそも名前を問うた時には…『誰』の名を問うたのか?…
 …それさえも…はっきりとせず…

 …ただ…頭に浮かんだそのままに…
 …言葉が口をついて出ていた…

 …他人の…しかも恐らく世間では最も『あの人』に近しいと…
 …そう認識されているであろう存在が呼ぶ…
 …『あの人』を指し示す呼称…
 …それも恐らく現在では『その男』唯一人のみに許された『それ』…
 
 「…どうでもいいだろっ!そんなことっ!」
 …無性に腹が立って叫んだ…

 …『そいつ』の口からは聞きたくない…
 …でも…やっぱり…聞いてみたい…
 …他ならぬ…『そいつ』の口から…

 …そんな矛盾した思いで叫んだ…

 「…じゃっさあ!君の名前教えてよv」
 …そんなオレの動揺をまったく気にせず楽しげに問い掛けてくる『そいつ』が…
 …オレは無性に腹が立って…
 …ニクンダコトはあっても腹が立ったコトはなくて…
 
 「………ミン……」
 …マスマスコンランしながらも…
 …それでもやっぱり…もしかしたら違うかも知れないから…はっきりさせたくて…ポツリと呟いた…
 …ここで本当の名を名乗ったらどうなるだろう?と…ホンの一瞬考えもしたが…それでも…
 …次の瞬間にはじいちゃんの悲しそうな表情(かお)が頭に浮かんで…
 …結局…名乗ったのは暗部用の『名』だった…

 「へーvミン君かーv」
 「…話す気あるのかないのかはっきりしろよ…」
 …オレの『名』を聞いて…嬉しげに口にする『そいつ』にオレはボソリと呟く…
 「…ああ…先生ね…先生はね…強くて…優しくて…大きな人だったよ…里では珍しい太陽みたいな金の髪と青い目がとても綺麗で…真剣な表情は凛々しくて…」
 「…あんたの師匠…もしかして…四代目火影?…」
 …『そいつ』の…誇らしげな『言葉』に…オレはやっぱりと目を見開く…
 …狐を象った…暗部面の下で…
 …四代目と…同じ青い『それ』を…
 「!お前!どうしてっ!…ってまあ…金髪碧眼なんて…木ノ葉にはそういないもんね…君ぐらいの年なら知ってるかも知れないなーっとは思ったけど…あっ!そうだっ!あの子のコトは実は機密なんだ…理由はもしかしたら君なら知ってるかも知れないけど…だから…内緒だよ」
 オレの言葉に…『そいつ』は一瞬驚いた様だったが…10才前後に変化してる『オレ』の姿から…その年齢(とし)で暗部なら知っていてもおかしくないと判断したんだろう納得した様子で言うと…最後に一瞬だけ殺気と共に釘を指してきた…
 「…心配しなくても知ってるよ…それよりオレは…あんたも『狐』を憎んでると思ってたけど…」
 …そう…『あんた』こそが…『里人』の中で最も憎んでいるんだろうと…
 …思っていた…

 …なのに…

 「…あの子は『狐』じゃないよ…」
 「…知ってる…でも『里人』には違うだろ…」
 …そんなこと言うな!…
 …ソンナコト言う位なら…
 「………ミン…君?…」
 …何故…
 …ナゼ…イマサラになって…
 「……あんたには会いたくなかったよ…」
 …不思議そうな『そいつ』に…それだけ言って…
 …立ち上がり…
 …そう言いながら特殊な印を組んだ…
 …忘却の術を使う為に…

 …そして…術が完成した時…
 
 …オレはもう一度呟いた…

 「…会いたくなかったよ…はたけカカシ…」

 …足下で倒れ伏す…はたけカカシに向かって…


       ……………………… ……………………… ………………………  


 …会いたく…なかった…

 …わかりたく…なかった…

 …きっと…いつか…まだ幸せだった遠い日に…この人に…あったコトが…あるのだと…

 …『この人』が…確かに…『あの人』の…
 …じいちゃん以外の人の前では…『父』と呼ぶ…否…想うコトさえ…許されない…
 …『その人』の…
 …弟子なのだと…

 …オレハ…

 …識りたくなど…なかったのだ…


 …無意識だけど…ずっと…会いたくないと…思っていた…

 …会えば…思い知るコトになるから…


                                  ―終わり―

 ―あとがき―
 皆様どうもです、RINですm(_ _)m
 えーこの話しは…設定だけは随分前から考えていたのに、なかなか書けなかった『S・Dシリーズ』とは別設定のスレナル設定話で…
 …実はリクエストの棚に置いてあるリク小説『機縁』と同設定の話しです。
 …『機縁』前編のあとがきで…その内書くと書いてから随分たってしまいましたが…
 …今回ようやく書き上げることができました…

 …長らくお待たせし申し訳ありませんでした<(_ _)>

                                  ―それではまたの機会に―RIN―