「…ただいまー…」
 …その日オレがアカデミーから帰ってくると、妙に家の中がシンとしていた…


 
ミッシング ―序―


 「…おかしいな…留守ってわけでもないのに、かーちゃんがなんも言って来ないなんて……なんか嫌な感じがする…めんどくせえことになりそうな…」
 …そう思ってオレは家から逃げ出そうと玄関の扉を開けた時だった…
 「オウ!シカマル帰ってたのか!」
 門の方からその声は聞こえた…
 …顔を上げればそこには…やはり予想通りに…
 「…オヤジ…」
 …父親がいた…
 …但し父親だけではなかったが…
 「こんにちはシカマルくん」
 「…ポリポリ…やあ!……ポリ…」
 …良く知った相手が二人…幼馴染みのいのとチョウジの父親達…
 「…奈良の息子か…なるほど聞いた通りだな…」
 …その声に始めて気付いた、もう一人父親達の後ろにいたことに…
 「ああ!息子のシカマルだ、シカマル挨拶しろ!こいつはゆいけい、特別上忍だ」
 …そう言って父親が指さしたのは、オレと同い年位の黒い髪に群青色の瞳の驚く程整った顔立ちの少年だった…
 「…あ…はじめまして…(…だよな?)」
 「…ああ」
 …初めて会った筈の相手である筈なのに…なにかどこかで会った事があるような気がして考えていると…
 「うん?どうした?」
 …そうオヤジに声を掛けられる…
 「…いや……なあオヤジ…あの人オレと同い年位だけど特別上忍なんだよな…」
 「…そうだがどうした?」
 オレの問い掛けに気のせいか、オヤジは何処か楽しそうな様子でそう返す…
 「…いや…じゃあオレの気のせいだな…」
 「なにがだ?」
 「…なんか…どこかで会った事がある様な気がしたんだけど…」
 …気のせいだよな…と小さく呟き…ああこれ以上考えるのめんどくせえと言いかけた時だった…
 「…なら…会った事があるのかも知れないぜ?」
 そのオヤジの言葉に、「オヤジそれどういう意…」そう言い掛けると… 
 「…なんせおまえもあいつも、この木ノ葉隠れの里に住んでるんだからな…」
 …そうオヤジは続けて、オレの言葉は遮られた…
 「お!そうだシカマル!おまえちょっとひとっぱしりして酒屋行って来てくれよ!ヒマなんだろ?どうせ」
 「…自分で行けよ…」
 無駄な抵抗だとは分かっていたが一応足掻いてみる…酒は結構重いから…
 「オレは客がきてんだよ!分かるだろうが!」
 「…かーちゃんは…」
 「かーちゃんは山中の奥さんや秋道の奥さんと一緒に料理の仕込みの途中だ!」
 …やはりどうやら無駄なんだろう…
 …はあと大きく溜め息を吐く…
 「…シカマルくんオレ達からも頼みがあるんだ、酒屋には『これから持ってきて欲しい』って伝えてくれるだけでいいから、いのとチョウジくんを呼んで来て欲しいんだ」
 「…いのとチョウジっすか?」
 …なんだ?酒を買ってこいって言うんじゃないのか?
 「…今日はみんなでご飯を食べるんだよ…ぽりぽり…」
 そう言ったのはチョウジの父親…いつも…チョウジと同じで…何かを食べている…
 「…わかった…んじゃ行ってくるから…」
 そう言ってオレは片手を振りながら家を出た…

                                  ―続く―