男神の追憶〜序〜

 …傍に居れば良かったのか…
 …傍にいて…抱きしめておれば…

 …伝えておけば良かったのか…

 『…そんな高尚さを求められても困る』

 『…そのような考え方は気に入らぬ』
 …かって何度と無く言った言葉…
 …口癖のように面倒は御免だと、怠けたいのだと言い…

 …なるようになるだろうと、あれの好きにさせて居た…
 …いずれはあれも判るだろうと…
 …我もまた楽観視していたのやも知れぬ…

 『……時はあれに安息をもたらさぬであろう…むしろあれの狂気を深きものとするやもしれぬ……』
 そう言ったのは我自身であったのに…

 …何故気付かなんだのか…
 …あれがああまで追い詰められておった事に…
 …その訳に…
 …あれが何に拘っておったのかに…
 …もっと早くあれに逢っておれば…
 …或いは…

 …だが歴史にもしもは有り得ぬ…
 『失われたモノを求めても詮無い事であろう、嘆いても何も始まらぬぞ』
 …かって我自身があれに言った言葉…

 …気付いた時にはもう遅く…
 …一度動き出した流れは止める事は叶わず…

 …なればせめてあれと共に逝こうと…
 …思っておったのに…

 「…余計な事を…せめて…あれの最後のわがまま…叶えてやりたかったのう…」
 

                            
                  〜続く〜

 ―あとがき―
 またしても伏羲女カ過去物です。
 計画終了後、遙かな過去に想いを馳せる伏羲です。