…ハッキリ言って一目惚れだった…

 …今年は絶対いい年だ!正月早々運命の相手に出会えたのだから!
 …そう思った…

―…森の中…木々に囲まれ…木漏れ日を受け…大きなクマのぬいぐるみを抱いて眠るその子供に…思わず見取れて…立ち止まった…
 …透き通る様な白い肌…日の光を受けて輝く長く綺麗な金色の髪…
 …そして…左右対称の整った面立ち…
 …ゆっくりと開かれたその瞳は…深く澄んだ…蒼…
 …その目にオレは射抜かれた…
 …眠そうに目を擦って…そして子供は口を開いた…
 「…ンー……だあれ?…」
 …眉を顰めこちらを見て…こてんと首を傾げてそう言った…
 …その仕草はもの凄く可愛らしかった…


 
―『オレ』は『キミ』の『オヨメサン』!?―


 …ぺち…ぺち…ゆさ…ゆさ…
 …いきなり頬に何かの感触…
 「…カ…シ…シ…カ…」
 …うー…なんだよ…もうちょっと待て…いますっごい良いところ…
 「…うー!…」
 …焦れたのか…幾分か拗ねた声…
 …そんなところも勿論かわいい…って…ちょっと待てオレ…
 「シカマル!!」
 …これ…この声…
 …夢じゃない…あいつだ!!
 「!ナルッ!!ナルじゃないか!いつ来たんだよ!気配消すなよ!すぐに分かんなかったじゃねえか!めんどくせえ」
 …目の前には…黒い着物を着た金髪に蒼い瞳の子供…
 …解ってたら…すぐ起きたのに…夢の中のナルより現実のナルのが、オレには大事だ!
 「…うりゅ?…シカちゃん?ナル…ケハイ消してた?」
 …そう言って後ろを振り返りながら、ナルはオレの親父にそう聞いた…
 「…ンー?…いんや…ナル坊はちゃんと分かるように気配出してたぞ!うちのバカ息子が分からなかったのはこいつの修行不足が原因だから…気にすんな…めんどくせえ…」
 …親父がにこりとナルに笑いかけ頭をわしゃわしゃとなぜながら言う…
 …それが嬉しかったのかナルが満面の笑みを浮かべ…親父にぴっとり抱きつき…
 「…んー…えへへー…シカちゃん大好きーv」
 そう言った。
 「!ナッ!ナル!!」
 その言葉にオレは焦る!
 「…なー?ナル坊?ホントにいいのか?こんな未熟者がナル坊の『オヨメサン』で?」
 …親父のその言葉でオレはマジで頭の中が真っ白になる!
 「ナッ!親父!」
 …初めて会ってから約1年…いくらナルとナルの周りが『普通』じゃなくても…そろそろ『常識』を身につけていてもおかしくない…
 …もっとも…男をすっかり女だと思い込んで告白した、オレもオレだけど…
 …だけど…無理もねえよな…
 …だって…オレらまだ3つだったんだから…
 …もしここでナルが首を横に振ったら…
 …オレ達の婚約は…

 「…ナル…おぬしらはまだ子供じゃ結婚はできん…」
 …ナルに会って三日目に会った、ナルのじいちゃんと言う人は眉間に皺を寄せてそう言った…
 「じいちゃ!ナル!コドモじゃないモン!ニンジャだモン!じいちゃが言ったんだモン!もうイチニンマエだって!カアサマ言ってたモン!ニンジャはいつ死ぬかワカンナイから、ニンジャになったらいつケッコンしてもいいし、ナンニンとしてもいいって!ナルはオトコノコで『ソーリョーサマ』だからカワイイ『オヨメサン』をハヤクもらわないとダメって!」
 …あ…あの?ナル?おまえイマなにげにすごいこと言ったよな…
 …ナルがニンジャ…イチニンマエ…オトコノコ…ソーリョーサマ…オヨメサン…
 「…あ…あやつら…余計なことを教えおって…まったく…ハア…」
 …ニンジャ…イチニンマエ…オトコノコ…ソーリョーサマ…オヨメサン…
 …オレの頭は珍しく混乱状態…
 …オレが整理しようとしているその間も会話は続き…
 「…ナル…確かにおぬしは立派に暗部で働いておる…二ヶ月後には変化して通っておるアカデミーも卒業…間違いなく下忍になれるであろう…だが…そちらの子供はどうかの…」
 …アンブ…アカデミー…ゲニン…
 …容赦なく次なる新たな情報…それもとんでもない情報が入ってきた…
 「…うっ…シ…シカー…」
 …ナルが潤んだ目でこっちを見てくる…
 「…って…ナルッ!オマエ男だったのか!?」
 …初めて会った日に告白して…次の日に…何故かいきなりうちにやって来て…(…どうしてうちの場所知ってたのかしらないが…とにかく嬉しかったしそれになによりナルがあんまりかわいくてあんま気にならなかったけど…)ケッコンしようって言ってきた時は…(…どういう意味か解らなかったけど…家族じゃない特別に大切な人とずっと一緒にいるための約束だってナルが言うからすっごい嬉しくて…)…ナルが帰ってから辞書で意味調べたら…もっともっと嬉しくなって…今日はナルがナルの『じいちゃん』に会わせてくれるって言うから来たのに…
 「…なんじゃおぬし知らなかったのか?」
 …ぜんぜんまったく知りませんでした…
 「…そうだってばよ?」
 …こてんと小首を傾げるその様は…とても可愛らしく…
 …ナル…オマエすっげーかわいい…
 「…って!違う!そうじゃない!ナル!オレも男なんだけど?」
 …そこんとこ分かってるか?
 「…しってるってばよ?シカはオトコ!オレもオトコ!でもシカちゃんもヨシちゃんもいいっていったってばよ?『ならけ』はつぎをつくるか、シカのこどもをヨーシにするからキにするなって!」
 …オヤジ…かーちゃん…なんでそんな無茶…いやそれより…ナル?オマエいつのまにそんな話し…いやそれもだけど…
 「ナル!シカちゃんとかヨシちゃんって!?」
 「…んー?…シカのおとーさんとおかーさん…?…」
 …いや聞きたいのはそういう事じゃなくて…
 …これはどうも昨日今日じゃねえ…おそらくはもっとまえから…だからナルは昨日うちにいきなりこれたんだ!
 …なんでオレ…気付かなかったんだろう…
 …オヤジとかーちゃんが昨日やたら機嫌良かったのは…
 「…んー!なんでっ!なんで言わなかったっ!」
 …浮かれてた自分がバカみたいで思わず怒鳴ってしまった…
 …するとナルは大げさな位にびくついて…目にもとまらぬスピードで『じいちゃん』の後ろに隠れてしまい、気配もまるで感じ取れなくなった…
 …それにオレは思わず目を見張る…
 …オレだってそれなりに強いと思っていた…オヤジに扱かれたから…なのに…
 …ナルが何処にいるのか分からない…移動も全然見えなかった…
 …唖然としていると…
 「…ぅん〜…シカ〜…」
 …そんな声がナルの『じいちゃん』の方から…
 …その声にそちらを見ると…
 …気配もなにもまるでないのに…おそるおそると言った様子で…『じいちゃん』の背に隠れながら、顔を出す目を潤ませたナル…
 「…シカ〜…オレのこと…やっぱりシカも嫌い?嫌いならいいよ?」
 …酷くなにかを恐れているようなナルの様子…
 …その様子も気になるが…もっと気になるのは、ナルのさっきの言葉…
 …やっぱりってどういうことだ?シカ『も』っていうのはどういう意味だ?
 …だが次の言葉でそれらの疑問はオレの頭からすっ飛んだ!
 「シカのこと忘れるから…オヨメサンになんて言わないから〜だから嫌わないで…もう二度とシカにすがたもケハイもみせないから…だから…」
 「…!だっ!誰がいつオマエを嫌いだなんて言ったよ!オレはオマエが好きだ!かわいい!ほれてる!オマエのためならオヨメサンでもなんでもなってやる!だから!もうそんなことぜったい!言うな!」
 …ナルにもう会えないかも知れない…そう思ったとたんに…気がついたら一気にそう言っていた…
 「…ホント?…」
 「本当だ!」
 …ナルはまだじいさんの後ろに隠れ…目を潤ませている…
 「…ホントにホント?」
 「…ホントにホントだ!」
 …少しだけナルがこちらに身を乗り出す…でもまだ目は濡れてる…
 「…じゃあ…じゃあ!アンブに入ってそしてオヨメサンになってくれる?」
 「…ああ…ってはあ!?アンブ!?ちょっと待て!オヨメサンはともかくなんでアンブ!?」
 …オレはナルの言葉に思わず頷き掛けて…慌てる…確かに、ナルのためならオヨメサンでもなんでもなってやる!とそう言った…けど…なんでいきなりアンブ!?
 「…だってじいちゃが…シカがニンジャじゃないからダメっていうんだモン!だったらシカもアンブに入ったらニンジャだってば!じいちゃ!それならいいってばよネ!ネ!」
 「…う…うむ…じゃが正式な忍ではないからのう…そやつがアカデミーに入学・卒業そして下忍になるまでは、精々認められるのは婚約までじゃな…」
 …ナルの非常識発言にてっきり否定すると思ったナルのじいさんは…そう言って頷いた…
 「アリガト!じいちゃ!」
 …ナルが満面の笑顔で『じいちゃん』に飛びつく…
 …そんなナルにじいさんの目尻が微かに下がる…
 …どうやらこのひとにとっては、正しくナルは目の中にいれても痛くない存在らしい…
 「…但し…ナルが嫌だと言えばいつでも婚約は解消するからの…気が変わったらいつでも言うが良い…まあ…もっとも…その子供が暗部に入らねば意味はないがのう…」
 …な…なにげにじいさんオレを睨んでる…
 …ぜってー睨んでる…
 …まじこえー…
 …このままじゃ…
 …アンブに入らないって言ったら…ナルはこんどこそ絶対泣くだろうし…もしかしたらナルに会えなくなるかも…いや…下手したら…このじいさんに…殺される…そんな気がする…
 …でも…
 …アンブになんてそんな簡単に入れるわけがねえ…
 「…オ…オレはよくても火影様が…オレみたいなガキアンブに入れるわけ…」
 …最後の砦とばかりに言う…
 …いくらナルがアンブでも…いくらこの二人が非常識でも…こればかりはさすがに…
 「…オレもアンブにはいってるってばヨ?」
 「…確かにまだ早いかも知れぬが…ナルの配下におくなら問題なかろ…」
 「…そう言う問題じゃ!って…え?…あのなんでそんな人事の話しに…」
 …嫌な予感がする…それももの凄く…
 「…だって…じいちゃ…『三代目火影様』だってばよ?」
 …ぱちくりと瞬きしてナルが言う…そんな仕草もかわいい…って違う…
 「…火影様?」
 …このじいさんが?
 「…さて本人への意思確認も済んだことじゃし…『奈良シカマル』暗部第零部隊への配属決定と…」
 …なにかの巻物にそう書き込むじいさん…もとい…火影様…
 「わーい!シカといっしょだってば!じいちゃアリガト!」
 …ナルの満面の笑みに…
 …詐欺だ!そう叫び掛けていたのも忘れ…思わず見取れた…
 
 …オレが下忍になるまでに…もしもナルが嫌だと言えば…ご破算…
 …そんなのいやだ!
 「…オレってば…シカにオヨメサンに来て欲しいってば…でも…シカがイヤなら…」
 「!イヤじゃない!オマエのオヨメサンはオレだっ!オレがオマエをイヤになるなんてゼッテーありえねぇんだから!んなこと二度と言うんじゃねぇ!」
 慌てて飛び起きて言う!
 …そんなオレに一瞬ナルはキョトンとし…そしてにこりと綺麗に微笑(わらう)と…
 「じゃ!シカマル!これからいっしょにニンムいこ!」
 …まるで遊びに誘うような気軽さで…ナルはそう言った…
 「…今日はどんな任務だ?」
 「…えーとね…たしか…ヨージンケーゴ!だってばよ!イタニイとカカニイもいっしょ!シュウゴウはアカデミーだってばよ!」
 …げ…今日のナルの護衛はあの二人かよ…二人ッきりは無理だって解ってるけど…よりにもよって…
 「…それじゃあ行くか…」
 
 ―…そうして二人は仲良く手を繋いで任務へと向かった…

                                  ―終わり―

 ―あとがき―  
 皆様随分お待たせしてしまい、申し訳ありませんでしたRINです。
 以前から予告しておりましたフリーのスレシカスレナルです。
 …どこら辺がスレなのかについては…この話だけでは解らないかも知れませんが…設定上は間違いなくスレですので、どうかご安心下さい!
 …さて?タイトルからナルトが『オヨメサン』だと思われた方申し訳ありません…
 …そして最後にファンサービスとばかりに、イタナルとカカナルの要素もちらっと覗かせました… 

 …さてこの『『オレ』は『キミ』の『オヨメサン』!?』はフリーですので、もし欲しいという奇特な方おられましたら、この様な駄文でも宜しければどうぞご自由にお持ち帰り下さい。
 …ちなみにお持ち帰りの際には、『螺旋の館』の名と『RIN』の名前を書き添えて下さい。
 …二次配布はしないで下さい。

 …サイトへのお持ち帰りをして下さる方…どうしてもとは言いませんが…掲示板にカキコ頂ければとても嬉しく思います。

                             ―それではまたの機会に―

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