―可愛らしい少女が二人、丘の上で対峙していた… 「…リナ…いまならまだ間に合うわよ…」 年の頃13・4才位の少女が…その年齢に合わぬ真剣な表情と声でそう言った。 目の前の…十になるかならぬかという少女に向かって… 「…ヤダッ!!あたしは絶対行くんだもん!!」 何処か追いつめられた様な様子の…こちらもその年に合わない覚悟を決めた様な表情で…それでもキッ!!と顔を上げて言った、その顔には涙が滲んでいた… 平和なゼフィーリアの昼下がり…いつもは彼女達の遊び場となっているその丘の上で、さわやかな初夏の風が吹き抜けていく…その場の雰囲気とは裏腹に… …そうして…少女達の尋常では無いその様子を聞きつけて街の人達も集まりだす… …一体何事かと…口々に言いながら… ―事の始まりはホンの数時間程前の事… ゼフィーリア王国・王都ゼフィールシティ郊外のとある邸宅… その屋敷の2番目の娘の勉強部屋から始まる… ―その家には二人の幼い娘がいた… 「イヤったらイヤッ!!」 「ダメったらダメっ!!」 ―娘達は普段滅多に喧嘩などしないが…その日は別だった… 「ねえちゃんのいじわる!!」 「リナの分からず屋!!」 ―普段は喧嘩になどなりはしない…否喧嘩にすらなりはしない… …何故なら… 「あたしだって行きたいんだもん!!お留守番なんてヤダもん!!ねえちゃんの意地悪!!」 「いい加減に聞き分けなさいリナ!意地悪なんかじゃ無いって言ったでしょ!いい加減にしないとお仕置きするわよ!!」 ―この二人の力関係が世間一般のご家庭より明確なものだったから… …そして…いつもは妹であるリナが…姉の『お仕置き』の一言で引き下がっていたから… …しかし…この日は違った… 「…うー…ヤダッ!!行くったら行く!!あたしだってもうねえちゃんに負けないもん!!強くなったんだもん!!」 珍しくリナが姉に食い下がり、宣戦布告ともとれる様な発言をしてしまった… 「…そう…そこまで言うなら仕方ないわ…町外れの丘で勝負よ!!あんたが勝ったら許してあげる!!」 …そうして…戦いの火蓋は切って落とされた… ―世界で一番凄まじい姉妹喧嘩― ―丘の上は今や人集りが出来ていた…姉妹を遠巻きに囲む様な形で… 「…なあ?一体何の騒ぎだい?」 「…あれ…インバースさんとこのルナちゃんとリナちゃんだろ?」 「喧嘩だってよ!」 「けんか?あの二人が?」 「あらまあ!珍しいこともあるもんだねぇ」 「…珍しいって言うか…一体何で…」 「…さあ?誰か知ってる?」 「…うーん?…あんまり何言ってんのか聞こえないからなあ…」 「…でもこれ以上近付くのは一寸危ないよな?」 「…そんな勇気のある奴どこにいるんだよ?」 「…ついこないだも…リナちゃん呪文で山一つ吹っ飛ばしたって…」 「…ルナちゃんは……言わない方がいい…よな…」 「…確かに…」 「…なあ…賭ないか?」 「おっ!いいなー!」 ―集まった人々は声を顰めて誰にともなく口々に言い… …いつの間にか賭をする者達が現れていた… …暫しの後… 「…ふっふっふ♪大分儲けたな〜♪」 人混みから離れた所で…ホクホク顔で笑いを噛み殺そうとしている男が一人… 「あらあら♪楽しそうですわね♪家の娘達のけんかで賭をするんでしたら、儲けの80%は『インバース家』(うち)の物ですわねv胴元さんv」 明るく朗らかな若い女性のその言葉に、男はピキッ!と一瞬固まり蒼白になる… 男がゆっくりと振り向くとそこには、にこやかに微笑む一人の若い女性… 「…あ…そんな…それはあんまり…」 胴元の男には…その女性に見覚えがあった…それほど深い付き合いがある訳では無いが…その性格はよぉーく知っていた… 「そんな事ありませんわv90%でも良い位ですものv」 にこにことそう言われて…男は即座に諦めた… ―様々な人々が見守る中…丘の上で…今…世界で一番凄まじい(…色んな意味で…)姉妹喧嘩が始まろうとしていた… 「…そう…仕方ないわね…なら…とっととかかってきなさい!」 バスタード・ソード片手に持った姉の一喝に一瞬リナはビクリと身を竦め…後悔する… …だが最早リナには退く事が出来なかった… …ウッ…ねえちゃん…怒ってる…でも… …でも…あたしは…… 僅かに躊躇し俯く… …だが直ぐにキッ!と顔を上げ! …あたしだって…もうねえちゃんに負けないっ! 『竜破斬』だって使える様になったし…魔道士協会からは『称号の服』だって貰ったし! …そうよ…いくらねえちゃんだって…『竜破斬』ならっ!! そう思い直し頭を振ると、リナは口の中で小さく詠唱をしながら、姉に向かってダッシュで駆けだした… ―結局…結果は…リナが至近距離から放った『竜破斬』をルナがバスタード・ソードで斬り、驚いた一瞬の隙に当て身を入れられてリナの負け… ―目を覚ましたリナは姉のお仕置きを受ける事となる…合掌… ―終わり― ―あとがき― 皆様いつもお世話になっております、RINですm(_ _)m …えーと…これはHPの二周年記念感謝企画として書きましたフリー小説です。 …と言うわけですので、もし欲しいという奇特な方おられましたら、この様な駄文でも宜しければどうぞご自由にお持ち帰り下さい。 …尚企画発動中はこの駄文は隠し続けます… ―それではまたの機会に―RIN― |