「太乙真人!何処にいる!話しがある!出てこい!」
 「騒がしいなあー、君が私に話しなんて珍しいね、何の用だい?ナタク」

 ―解らない…―

 「太公望がお前に聞けと言ったから来た!」

 ―俺は強い奴は匂いで解る…
 
 ―太公望・太乙真人・仮面の男・楊ゼン…俺はこいつらに負けた…
 だが解らない…仮面の男や楊ゼンは強い、だから解る。
 太乙は弱い!だがあいつに負けた理由は解っている…俺があいつに負けたのは宝貝の性能の為だ!
 「何を難しそうな顔をしておるのだ?」
 その声に顔を上げるとそこには太公望がいた…
 …何故こいつが来た事に気付かなかったのだろう…
 「難しそうな顔、それはどんな顔だ!」
 こいつの言う事はよくわからん!
 「今のおぬしの顔そのままじゃよ、おぬし何か考え事でもしておったのだろう」
 「何でそれがお前には解る!」
 ジャキッと乾坤圏を構える!
 「見れば解るわい!なんならわしが相談に乗ってやろうか?」
 「お前の話はややこしくてよくわからんからいい!」
 「なら、太乙にでも相談するがいい!おぬしが聞けば喜んで教えてくれるであろう」
 
 「太乙!お前は弱い!太公望は強いのかどうかわからん!だが俺はお前達に負けた!お前等はよくわからん!俺は強い奴は匂いで解る、弱い奴もだ!なのにお前等の匂いはよくわからん!何故だ!」
 「なるほどね…君の疑問がそれなら、太公望に聞かずに私の所に来たのは正解だね」
 横になっていたハンモックから降りて太乙が俺を見て言う。
 「それはどういう意味だ!」
 ジャキッ!乾坤圏を太乙に向ける。
 「あわわ!落ち着いてよナタク!」
 太乙が慌てた様子でそう言って、続ける。
 「太公望は隠すのが上手いんだよ」
 「意味がよくわからん!もっと分かりやすく言え!」
 もう一度乾坤圏を向ける!
 「だからっ、落ち着いてってばっ!」
 乾坤圏を下ろす。

 乾坤圏を下ろした、ナタクの様子に、ひとまずホッとして、太乙は話しを再開した… 
 「ナタク…君が解らないのは、太公望と私だけかい?」
 ナタクは暫し考えた後に首を振った…
 「やっぱりね…でもねナタク、君がそれを解らなくても気にする事は無いんだよ、否、解らないという事が解るだけでも大した物だよ!」
 にこにこしながら太乙真人は言う。
 「何が可笑しい!」
 そんな太乙の様子に、またナタクは乾坤圏を向ける…
 「わっわっ!止めてよナタク、可笑しくなんか無いよ〜」
 慌てる太乙に、しかしナタクは聞く耳を持たない!
 「それなら何でにやにやしてるんだ!」
 「うっ!嬉しいんだよ!」
 「…嬉しい?」
 太乙の言葉にナタクは怪訝そうにしながらも、乾坤圏を下ろす。
 「何故嬉しいんだ?」
 「子供の成長が嬉しくない親なんかいないさ」 
 不思議そうに問うナタクに太乙はにこやかに答える。
 太乙の言葉に、またナタクは不思議そうな顔をする。
 「…そう言えば…母上も昔似た様な事を言っていた…」
 「成長…それは、俺が強くなったという事なのか…」
 暫しの沈黙の後にナタクはそう呟いた…
 太乙はそんなナタクを穏やかな表情を浮かべて見つめる…
 「そうだね…少し違うけど…みんなそうやって強く大きく成長していったんだ…」
 「太公望や楊ゼンもか?」
 「そうだよ…」
 「お前のいう事もよくわからん…」
 「今は解らなくてもいいよ…君はまだ幼いからね…」
 「…ナタク…君が感じたのは経験とか精神力とかそういったものだと思うよ、それは君や楊ゼンの持っている実質的な、物理的な力の強さとは違うけれど…仙道にとってはとても大切な力なんだ…」
 「最も太公望の場合は…自分の力をとても巧妙に隠してるからね…原始天尊様ですら本当の実力は解らないんじゃないかなぁー」
 「まぁ…太公望の実力なんて解らなくてもいいんだよ、実際誰も解らないんだからね」
 ははと笑う太乙に、やっぱりお前等の事はよくわからんと言い捨てるとナタクは乾元山を去って行った…

 「…でも…君なら…解るよ…きっと…いつか…」

 ―あとがき―
 KURENAI様からのリクにより書かせて頂きました。
 リク内容は太乙となたくでした。ご満足頂けるかどうか不安ですが、ひとまずこれをUPさせて頂きます。
 尚、ご不満な場合は、仰って頂ければ、時間は掛かると思いますが、書き直しを致します。
 それでは、キリ番HIT&リクエストどうも有り難う御座いました。
 
 ―遅くなって申し訳ありませんでした<(_ _)>  ―RINより―