「…ど…し…て…」

 …微かに…聞こえた…その声…

 …その声の主に…レロは目を見張る…

 …!…泣いてる…レロ…
 …自分でもなんで涙が出るのか解ってないみたいレロけど…
 …もしかして…?…

 …まさか…?…

 …泣いてるのは…?…
 …『アレン』たま…?…レロか…?…

 …だとしたら…まさか…?…スキンたまの身に何か…?… 


 岐路(わかれ)への道程(みち) 
              ―1―
                〜幕間〜



 ジャスデビの持ってた請求書に載ってた、アレンの名前…
 …アレンは…いま…方舟…
 …ジャスデビはだいぶクロスに苦労してるみたい…
 …そのジャスデビに…クロスの弟子の『アレン・ウォーカー』が、いま『方舟』で『僕ら』と『ゲーム』してるって言ったら…フフ…
 …『アレン』を知らないジャスデビは、きっと随分アレンを追い詰めてくれるんだろうなー…くすくす…
 …どうせ…アレンは死なないし…
 …『ノア』の『子供』であるジャスデビが…アレンと戦うって言っても限度があるし…

 「…ねぇ?…」

 …たきつけて…みようかな…フフ… 

 「…ヘェ?…クロスの弟子が?…ふうん…」
 何かを考えるようにデビットが呟く…
 「…ヒヒ…おもしろそう…ヒヒ…」
 ジャスデロが楽しそうに笑う…

 …そんな二人に僕は声を掛ける…
 「ジャスデビー!アレンのとこ行くの〜?」
 …思った通りの二人の反応に…つい笑みが漏れる…

 「…ん?ああ!クロスのヤツいないし?」
 デビットがそう言って愛銃をその手で玩ぶ…
 「ねぇねぇ?デビット?クロスのヤツ…コイツ人質にしたら来るかな?ヒヒ」
 …請求書のアレンの名前を指差しながらジャスデロが言った…
 「さあな?…でも?弟子ってくらいだからなー?」
 …もしかしたら…そうジャスデロの問いに、ニヤリと笑ってデビットが答え…

 …そうして二人は部屋を出ていった…

 「…なあ?ロード?確かクロスとは合流されたらマズイんじゃなかったか?」
 ジャスデロが出ていった『扉』を見遣って、ティッキーが聞いてくる。
 「…う〜ん…たぶんクロスこないと思うし…大丈夫だと思うよー?」
 …なんとなくだけどそう思う…これまで聞いた限りじゃクロスってそんな甘いヤツじゃないみたいだし…
 「…でも…クロスがどこまで『アレン』のこと知ってるか?…それ次第じゃ…もしかしたら…」 
 「…来るかもしれないってか?」
 …僕が考えながら言った言葉に…ティッキーが身を乗り出す。
 …するとその時…
 「大丈夫ですヨv」
 千年公が入って来て言った…どこか嬉しそうな様子で…
 …スキンのことがあった割に機嫌がいいみたい?…どうしたんだろ…?…
 「いかにクロスと言えど、そう容易くは方舟に侵入出来ませんシv仮にクロスが『奏者』の『資格』を持っていたとしても、簡単にはアレンの所には行けませンv…まタv行けたとしても行くような男ではありませンv…その心配は殆どいらないでショウv」
 …それヨリv…そう言ってニィと千年公が笑い…
 「良いニュースがありますヨvロードv」
 更ににっこりと千年公は笑みを浮かべる…
 …ホントに機嫌がいいみたい…どうしたんだろ…?…
 「アレンが涙を流していましタv…とても哀しんでいるようでしタv」
 「千年公!それホント!?」
 …アレンが…?…じゃあ…それは…
 「エエv間違いありませンv『アレ』は『アレン』の『涙』デスv『アレン・ウォーカー』は解っていないようでしたガv『アレン』には聞こえたのでショウvスキンくんの悲鳴ガv…随分『封印』は弛んでいる様ですヨv『アレン・ウォーカー』に『影響』が出るくらいですからネv」
 …くす…そっか…
 「…アレンが……じゃあ…ホントにあともうチョットだねv」
 …くすくすくす…
 …嬉しくって…とまんないやー♪…フフ…でも…まあいっかv
 「…どういうことっスか?俺よくわかんないんスけど?…いくら少年がチョット『特殊』って言ってもノアでもないのに、なんで泣くんスか?」
 …え?ティッキー?…
 …ティッキーが不思議そうな表情(かお)で千年公に聞く…
 「…もしかして…千年公?…ティッキーにまだ全部言ってないの?」
 「…くすり…忘れてましタv」
 にっこり笑って言う千年公…とても…愉しそう…
 …うっそダーv…アレンが思い出した時に、ティッキー驚かそうと内緒にしてたんだv
 「……嘘でしょ?千年公…」
 …がっくりと肩を落としてティッキーが言う…
 …まっ…わかんない方がおかしいよね〜♪
 「エエvホントはワザとでスv」
 …ハア…やっぱり…そうティッキーが溜め息を吐いて脱力する…
 「…それで…千年公…どういうことっスか?」
 「…『アレン』はエクソシストであってエクソシストでなイvそう言いましたヨネ?v」
 にっこり笑って千年公はティッキーに言う。
 …その千年公にティッキーが頷く…
 「ええ」
 「…より正確にハv『アレン』は『ノア』なのでスv『イノセンス』を『持つ』が故に『エクソシスト』にも成り得る『唯一』の『例外』…それが『アレン』デスv」
 …つまり『アレン』がスキンくんの事で、泣いても少しもおかしくないのでスv 
 …そう千年公は付け足して笑みを浮かべた…
 「…ちょっと『アレン』は『特殊』なので、その事を知らなければ気付けませんがネv…でも…アレンに会った時…気にはなったでショウ?v」
 …千年公のその言葉に、ティッキーが「あっ」と声を漏らす…
 …思い当たったみたい…
 …今頃…ジャスデビも感じてる筈…多分…スキンも…
 …でも…わかんないままで戦ってると結構苛つくみたいなんだよね…
 …知ってる僕だってキツイもん…
 …なんか…アレン相手に戦うの…ノアにとっては…結構ストレスになるんだよね…
 …まあ…当然なんだろうけど…
 …ジレンマってヤツなんだろうな…
 …それで…感情が不安定になったり…好戦的になったり…しちゃうんだよね…
 …まあ…それは…アレンだってそうなんだけど…

 …ホントだったら…戦いたくない…大切にしたい…守りたいって…想う相手だから…

 …そういう意味じゃあ…ジャスデビには悪いことしちゃったかな…?…

 …フフ…

 …でも…それはアレンにも同じだし…だからゼッタイ揺さぶりになるんだよねv 

 …ゴメンネ〜vジャスデビv

                                            ―続く―