…ノアに覚醒した事で知った。最近偶にしか姿を見せなくなった古馴染みの友人の一人がノアの宿敵であるイノセンスに適合したエクソシストであると言うこと…
…そして…瞬く間に『元帥』になったのだと言うことを…
―『その事実』を知った時…もう二度とあいつとは会うまいと決めていた。
…会えば…あいつと殺し合う事になると…そう思っていたから…
―『約束』と『運命の鍵』―
―クロスとマナの『約束』―
―1―
茶色の髪の赤子を抱いて男は必死で走っていた。
ハアハアと息を切らせ、『ある場所』を目指して…
「クロスッ!!」
―バタンッ!
激しい勢いでドアが開いた。
クロスは自身が泊まる、その宿屋の部屋のドアを開けて入ってきた、その人物の顔を見て、その手に持つ『拳銃』をテーブルの上に置くと、代わりにテーブルの上に置いてあったワインのボトルに手を伸ばし、そしてグラスとボトルをその手に持つ。
「よう、久し振りだな、どうした?血相変えて?」
久方振りに会う旧友のその顔は蒼白だった。
クロスの知っている。その男はいつも陽気だった…
…珍しいこともあるものだ…
友人のその様子にそう思いつつ軽い調子でクロスは言った。
―そんなクロスに…
「…助けてくれ…キミしか頼れないっ…」
友人…マナ・ウォーカーは『この世の終わり』のような…せっぱ詰まった表情(かお)をしてそう言った。
―続く―