…俺っちにはもう…時間がねぇさ!!!…

  「…好き放題して…自分勝手な男(やつ)…」
  「…あんたなんか…嫌いよ…」
  「…あたしは…ハニーが好きなんだから…」
  空を行く一道の魂魄を見据え、少女はポツリと呟いた…

 ―揺るがぬ心(思い)…


    
…揺れる心…
     …揺るがぬ心…



 ―セン玉が気になりだしたのは、いつ頃からだったさ?

  モグラを助ける為に一生懸命だったセン玉…

  「ハニー…ハニーが助かればあたし…」
  モグラを助けた後のセン玉の、あの満足そうな表情(かお)と言葉…

  …セン玉はあのモグラのどこがいいさ?…

  …でも…セン玉の危ない時…助けたのはあのモグラだったさ…
  助けられた時のセン玉の嬉しそうな表情はとても綺麗で…
  それが何か気に入らなくて…
  悔しくて…

 ―そして…
 
  …あれは趙公明戦が終わり、仙界大戦が始まる少し前…
  …スースが金鰲島に一人で向かったばかりの頃…

  セン玉が珍しく一人で居るのを見て…特にこれと言った用も無いのに声を掛けた…
  「セン玉…あの…ちょっといいさ?」
  これからモグラの所に行くのが分かってたから…モグラと一緒に居る所を見たくなくて…
  声を掛けた時には…そんな気は無かったけれど…
  多分…見たくなくて…それで…気が付いたら…声を掛けてたさ…

  振り向いたセン玉の顔を見て…何でか一瞬呆けて… 
  「うん?なに?天化?修行?」
  その声で…我に返ったら…セン玉が不思議そうな表情で俺っちの顔を覗き込んできていて…
  俺っちは…正直焦ったさ…
  「いや!そうじゃないさ!!」
  「それじゃ〜どうしたの?随分歯切れ悪いわね〜♪」
  「いや…その…」
  特にどうと言うわけでもないのに声を掛けたから、何て言って言いのか…何が言いたいのか…分からなくて俯いた…
  そうしたらセン玉が…何かを見つけたのか声を上げたさ…
  「何だ〜それならそうって言えばいいのに!あんたって意外と照れ屋なのね〜♪」
  「なっ!何の事さ!!」
  セン玉が何を言っているのか解らなくてそう言えば、セン玉はニヤニヤしながら言ったさ…
  「何って包帯!巧くできなくて解けちゃったんでしょ!座んなさい!やったげるから♪」
  言われて始めて気が付いたさ…包帯巻きかけだったって事…
  「ああ!包帯!あちゃ〜…すっかり解けちまってるさ〜!」
  「さっ!座んなさい!」
  「ああ…頼むさ…」
  「まったく!あんたって意外と不器用なのね!しょうがないやつね〜♪」
  ニヤニヤしながら包帯を巻くセン玉にムッときて…つい言っちまったさ…
  「モグラだっていっつもいっつも女の子に飛びついてばっかりでしょうがないさ!どうしてセン玉はあのモグラがいいさ!」
  「ちょっと!天化!あんたモグラモグラって!確かにハニーは浮気者だけど!あんたにハニーの何が分かるのよ!ちょっと背がハニーより高いからって!ハニーの事バカにしないで!」
  セン玉が真っ赤な顔で怒鳴る!
  「そっ!そんなんじゃないさ!」
  俺っちも負けじと声を張り上げる…
  「じゃあ!なんなのよ!」
  セン玉の大きな瞳が俺っちを睨み据える…
  「俺っちセン玉の事が心配さ!あいついつか絶対セン玉を泣かせるさ!」
  何を言ってるのか解らなくなる…
  「そんなの分かんないじゃない!あたしとハニーの事よ!あんたは関係ないじゃない!何でそんな事言うのよ!大きなお世話だわ!」
  セン玉の大きな瞳からはいつの間にか大粒の涙が零れていて…
  「関係なくないさ!俺っちセン玉の事が好きさ!」
  別に俺っち泣かせたい訳じゃないのに…もう何が何だか分からなくて…
  「う…うそっ…」
  セン玉が…もう泣いてなかったけれど…
  …こんどは戸惑った表情をしていて…
  「うそよ!」
  そんな表情させたかった訳じゃないのに…困らせるつもりなんてなかったのに…
  「あんたなんか!あたしの事一番じゃないくせに!いざって時あたしを守ってくれないくせに!最後まで側に居てくれないくせに!なんでそんな事言うのよ!」
  セン玉は一息にそう言うと踵を返し駆けて行った…
  俺っちの事一発バチンと平手で殴って…

  「…そんな事…そんな事無いさ…」
  一人残った俺っちはポツリとそう言った…
  …その時は心底そう思っていたから…

 
 ―仙界大戦の時…

  「ハニーあたしたちはずっと一緒よ」
  「な…何を今さら…」
  ハニーの即答…嬉しかった…ハニーは女好きだけど…でも…
  …だから…どんな時でも女の子を優先してくれる…

 ―ハニーに初めてあった時…運命を感じた…
  …この男性(ひと)を好きになったら…きっと幸せになれる…
  …乙女の直感!そう思った…
  パパはハニーが気に入らなかったみたいだけど…
  例えば楊ゼンみたいなのはどうかって言ってたけど…
  顔が良いとか…将来性とか…そんなの関係無い…
  あいつじゃ駄目…
  自分が強くなって…認められる事しか考えてない奴なんて…
  あんな奴ちっともあたしの事見てくれない…
  天化だってそう!
  あいつも楊ゼンの奴とそう変わらない!
  自分が強くなる事しか…認められる事しか…考えてないのに!
 
  あたしの事なんてちっとも見てないくせに…
  あたしの側に何て居てくれないくせに…
  どうして…そんな事言うの…
 
  …どうして…

  …俺っちにはもう…時間がねぇさ!!!…

  …行ってしまうの…
 
  「やっぱり…あんたは…なんだかんだ言っても最後にはあたしなんか見向きもしないのね…」
  …それなら…好きだなんて云わないでよ…
  「…好き放題して…自分勝手な男(やつ)…」
  …嫌な奴…絶対口には出さないけれど…チョットは好きだったわ…
  「…あんたなんか…嫌いよ…」
  …あんたに真っ直ぐな瞳で見つめられて…ホンの少しだけ心が揺れたわ…でも…
  「…あたしは…ハニーが好きなんだから…」
  …やっぱり…あたしとあんたじゃ道が違う…
  …あんたは戦士である事を選んだ…あたしはハニーとずっと居る事を選んだ…
  …だから…
  …さよなら…天化…あんたの事…
  「…嫌いじゃないわよ…」
  魂魄の飛んだ空を見上げ…少女は小さな声で…息するように囁いた…

 …揺れる心(気持ち)…

 ―天化・封神寸前…

  「あんたなんか!あたしの事一番じゃないくせに!いざって時あたしを守ってくれないくせに!最後まで側に居てくれないくせに!なんでそんな事言うのよ!」

  …ああ…そうか…セン玉…こういう事だったさ…
  …あーたの方が俺っちより…俺っちの事…分かってたんさね…
  …でも…俺っち…あーたの事…好きって言ったの…嘘じゃないさ…

  …でも…やっぱり…後悔はしてないさ…
 
                   ―了―

 ―あとがき―
 3333HITおめでとう御座います!遅くなって済みませんでした<(_ _)>
 えーこれは…3333HITを取られたaiko様のリクにより書かせて頂きました物です。
 リクエスト内容は天蝉でした…がご満足頂けるかどうか少々不安です…(-_-;)
 ですが…折角書き上げました物なので…取り敢えずこれをUP致します…ひとまずこれをお受け取り下さいm(_ _)m
 もしご不満な様なら仰って頂ければ時間は掛かるかも知れませんが書き直しを致しますので、遠慮無くどうぞ(^_^)

 ―それではカウンター申告並びにリクエストどうも有り難う御座いました―RIN―

 
―7月10日―ミスを発見修正致しました<(_ _)>