「…ティエドールはいねぇのか」
 漸く来たかと思ったら…ティエドールはいなかった…
 「…ちっ…時間がネェかも知れねェってのにっ…」 
 やって来た連中を一瞥し俺は舌打ちして言った…
 そう…やって来た連中の中には…ティエドールとブックマンとそして呼びに行かせたジュニアの姿がなかった…
 それは…ティエドールとブックマンが…『何か』こいつらの前ではし辛い話をしていると言う可能性があると言うこと…
 俺は…それが…何故か無性に気になった…
 …リナリーやジュニアの様子と関係があるのではと…思った…
 …それは根拠など無い…
 …強いて言えば…俺の『感』だ…

 …だが…俺のこの手の『感』は…よく当たる…

 …俺は無性にアレン(あいつ)のことが気になった…
 

 
―11年前の『奇怪』―
              ―2―
 


 アレンが見たという『夢』が…クロスはどうしても気に掛かった…
 …だが…
 チラリとリナリーを見る…蒼白で震えるリナリーのその様子に…彼女に問うのは躊躇われ…(…これが男であったら無視したのだが…)
 アレイスターの孫は…取り立てて『何か』を知っている様にも思えない…
 …一番状況を理解してそうなのはジュニアだったが…ジュニアはこの場にはいない…
 一番状況を理解していそうであったからこそ…二度も同じ説明をするのを嫌ってクロスはラビに呼びに行かせた…
 だからこそこの場にはいないのだが…
 …ちっ…使えねェなっ…
 クロスは…自分が呼びに行かせたと言うことを完全に棚に上げて、胸中でラビを罵った…
                                            ―続き―