―…俺がマナから聞いた『アレン』の『過去』…
 …『11年前』に端を発するその『過去』は非常に厄介なモノだった…

 …当時…『人間』に散々な目に遭わされていた『アレン』は…伯爵と出会い言葉巧みに『人間』への『憎しみ』を植え付けられた…

 …求めても得られなかった優しさと温もり…
 …愛情に飢え…孤独に苛まれた…幼い子供は…
 …『それ』を与えてくれた相手を無条件で信じた…

 …そうして…『人間』に受け入れられなかった悲しみを…寂しさを…言葉巧みに『憎悪』へとすり替えられた…

 …『化け物』と呼ばれ…石持て追われた『過去』…
 …初めて与えられた優しさと愛情と温もりの『記憶』…

 …そして伯爵を…ノアを…『家族』と信じ…愛し慕った…『アレン』の『想い』…

 …『それ』が『マナ』が封じた『アレン』の『過去』の総てだった…


 
―11年前の『奇怪』―
              ―3―
 


 アレンが見た『夢』のことが妙に気に掛かった…
 簡単に解けるような『封印』ではない…
 …だが…現にアレンは『過去』の『夢』を見ている…
 …まさかと思うが…『封印』に綻びが生じているのか…?…
 …だとしたら拙い…
 そこまで考えて…俺は『あること』に気付く…
 …ティムキャンピーと会った時…チェックしたメモリーには確かに気になるモノが映っていた…
 そのことに気付き…俺は「まさか」と思う…
 アレンはこれまでに何度か伯爵やノアと出会っている…
 メモリーの中の伯爵やノアのアレンへの態度は…エクソシストに対するごく普通の対応…さして奇妙なところは無い…
 だからこそ…これまで気にしなかったが… 
 「…リナリー…アレンが『悪夢』を見たという話だが…それは『ロード』に会う前か後か?どちらだ…」 
 『ノア一族』の『長子』ロード…
 マナ以外で唯一『アレン』と親交を持っていたという…『夢』を操る『ノア』…
 聞く所によると大層アレンに懐いていたという…
 「…後ですが…それが…」
 リナリーの返答に…やはり…と思う…
 「…そうか…どうやら…のんびり話しなんぞしてる余裕はなさそうだな…」
 …どうやらすぐにでも馬鹿弟子の所に向かった方が良さそうだな…
 「…クロス元帥…それは…」
 どう言うことかと問おうとするリナリーの言葉を俺は遮り…
 「おいっ!俺は先に馬鹿弟子の所に行くぞっ!お前達は後の連中が来てから来いっ!」
 …少しくらいは…父親とふたりにしてやろうかとも思ったが…
 「場所はティムが知ってるっ!」
 そう告げてティムに残るように伝え…俺は駆けだした…
 アレンのいる筈の…『あの場所』を目指して…
 
                                            ―続く―