…『声』が聞こえる…どこからか…不思議な『声』…
―憎みなさイv…
「…ら…ない…」
―呪いなさイv…
「…いらない…」
―怨みなさイv…
「…マナを奪った世界なんか…」
―なにもかも総テ…v…
「…いらない…」
―否定しなさイv…
「…神なんか…嫌いだ…僕から全部奪(と)っていく…」
―…そうでスv…
「…神も世界も運命も…みんなみんな…」
―…それでいイv…
「…嫌いだ…僕からマナを奪う総て…」
―…お前のその『想い』ガv…
「…他の存在(もの)なんかいらない…マナだけが…僕の総て…」
―…呼び戻す為の『力』になるのでスv…
「…マナさえいれば!他はいらない!」
―…さアv喚びなさイv愛しい名ヲv
「マナ!マナ!マナー!!」
―…良くできましタv
―…素晴らしいですヨvアレンくんv
―プロローグ―
―1―
「マナー!!!」
―ガツン!!!
…痛い…頭が…なんでだ?
…疑問に思っていると…
「五月蠅い!馬鹿弟子!さっさと起きろっ!!」
…酒瓶を持った師匠が其処に立っていた。
「…し…師匠?…あの…僕…頭が痛いんですけれど…もしかして『それ』で殴ったんですか?」
…頭を押さえながら…僕は師匠に問う…
「あ?それがどうした?それとも金槌の方が良かったか?」
…その師匠の言葉に僕は慌てて首を左右に振る。
「なら問題ないな」
ニヤリと笑って師匠が言う。
「ちょっ!待って下さい!どこが問題ないんですかっ!馬鹿になったらどうしてくれるんですかっ!?」
「なんだ?そんな心配してたのか…安心しろ、お前は元々馬鹿弟子だ」
僕の抗議の言葉を、しかし師匠はそう言って聞く耳持たない。
「!なっ!師匠っ!」
聞く耳持たない師匠に更に抗議をしようとして…
「違うと言うのなら…いい加減『負の感情』を振り切れ」
不意に師匠が僕の方を向き直り言ったその言葉に…
「…僕…は…」
「…魘されていたぞ…アレン…」
…思考が停止する…
「…大方『あの日』の『夢』を見たんだろうが…」
―憎め…
「…『夢』を見るのはお前の内(なか)にまだ『憎しみ』が残っている証拠だ」
…『あの日』のあの『声』…
「…いい加減世界や自分を呪うのを止めろ」
…あの『声』が…
「…お前はエクソシストだ、伯爵のアクマじゃない」
「…わかって…ます…」
…わかって…
「…『声』は伯爵がお前に植え付けた『モノ』の『残響』が、お前自身の『闇』と呼応しているだけだ、お前がお前の『闇』を振り切れば自然と聞こえなくなる」
…わかっています…
…もう何度も…言われたから…
「…いいか…何度も言うが『奴ら』と戦うにあたって『負の感情』を持つな、どうしても『憎しみ』を止められない時は戦うな、いいな」
「…はい…師匠…」
…師匠の言葉に…僕は項垂れて…そう答える…
―続く―