…アレンがすぐそこで…大道芸をしてる…

 …アレン…昔はいつも…僕にやって見せてくれたね…

 …そう…僕だけに…

 …それを思い出すと…もう我慢が出来なかった…

 …話しかけずには…いられなかった…


 
ロードの不満―4― 


 「…カボチャと魔女のチケット…」
 …それでも…
 …アレンの名前は呼べなかった…
 …だって『誰?』なんて言われたら耐えられない…
 …だから…内心恐る恐る…声を掛けた…
 …心の中は…期待と不安で一杯…
 …期待しているのは…
 …僕を見た途端…アレンが思いだしてくれて…
 「ロード」
 …そう僕を呼んで抱きしめて…優しいキスをくれること…
 …でも…その期待はすぐに崩れる…
 …だってアレンの様子は変わらない…
 …『お客』への『態度』…
 …アレン…アレン…
 …僕はここだよ?…
 …こんなに近くにいるんだよ?…
 …こんなに近くで呼んでいるんだよ?…
 …なのに…なのに…聞こえないの?…
 …どうして?…
 …聞こえてない筈ない…なのにどうして?…
 …どうして耳を塞ぐの?…
 …どうして?…

 …あいつの所為だ…
 …あの裏切り者…
 
 …悔しい…

 …そんなにあいつがいいの?…

 …そんなにいまが気に入ってるの?…

 …嫌だ!嫌だ!嫌だ!…

 …許さない…『僕』から『アレン』を取るなんて…

 《…アクマ…》

 …アクマに指示を出す…

 「お嬢ちゃん」
 …そう言って行ってしまった…アレン…

 …悲しい…悔しい…

 …なんで僕がこんな思いをしないといけないの?…

 …アレン…次に会う時には…僕の名前を呼んでね…

 …たとえ思いだしていなかったとしても…

 …もう「お嬢ちゃん」なんて呼ばせない…

                                            ―続く―