「…クロス…アレンくんの姿が無いけど…彼はどうしたんだい…」
 コムイの言葉にその場の空気と…そしてそれぞれの表情が…程度の差はあれども変化する。   

 門が開いたと同時に、息を切らせて出てきたのは教団随一の変人ではあっても、歴代『室長』の中では比較的『まとも』な現『室長』コムイだった。
 そのコムイが門から出てきて一番に口にしたのは、いつも団員が帰還すると必ず口にする『おかえり』と言う『言葉』でも、妹への過剰なまでの愛情に溢れた『言葉』でもなかった。

 「…コムイ…クラウドとソカロも呼べ重要な話がある」
 クロスはそんな…いつでも団員一人一人を案じるコムイの様子に…『この男が『室長』で良かった』と内心密かに安堵しつつも…実際は厳しい表情でそう言った。


 
―悪魔の子―
       ―第2章― 
             ―2―
 


 「…コムイ…クラウドとソカロも呼べ重要な話がある」
 帰還直後のクロス元帥の言葉にコムイは思う。

 ―『アレンくんはどうしたのか?』
 その問いには答えずにただクロスはそう言った。

 …残りの元帥二人を呼べと言うその言葉。

 コムイはその言葉の意味を考える。
 
 …『それ』は…「『元帥』を呼べ」と言う『意味』なのかそれとも「『エクソシスト』を呼べ」と言う『意味』なのかと…

 今教団にいる二人の元帥とヘブラスカを除けば、生き残っているエクソシストはこの場にいないアレンを含め、江戸から帰還した『クロス部隊』と『ティエドール部隊』のみ…普段『ヘブラスカの間』を動けないヘブラスカと、何故かこの場にいないアレンを除けば、『元帥二人を呼ぶ』と言うことは『教団にいる動けるエクソシストを全員呼び集める』と言う事であるから…

 ―だからコムイは緊張しつつもその口を開き…

 「……それは…クロス元帥…それは『元帥』を呼べと言う事ですか?…それとも…『エクソシスト』を呼べと言うことですか?」
 その疑問を口にした。

                                       ―続く―