…気が付いた時…目を開けると…其処はただあお…
…あおが晴れるとその総てを僕は忘れた…
…立ち上がった時には、僕は自分が何処の誰なのかを知っていた…
…同時に通常では知り得ない様な事も知っていた…
―碧の行く末― 〜1〜
「望!無事だったか!!」
喜びに満ちた声に少年は振り向く。
「父上!」
「今度もまた無事に殷の軍勢を撃退出来た、望よお前のお陰だ!」
「…父上…あの…」
珍しく言い淀む我が子に羌族の頭領は眉を顰める。
「どうしたのだ?望、何かあったのか?」
俯いて暫し考え込んだ様子だったが…やがて少年は顔を上げた…
そして…言った…何かを決意した様に…
「父上…そう遠く無い内に、再び殷の羌族狩りが有ります。それも、かって無い規模でです」
「…何か手は無いのか…」
「もう既に有る程度の手は打ってありますが…今度ばかりは…」
「…そうか…」
望は…我が子ながら、不思議な所がある子だった…
先の先まで見通した、賢しい、子供らしく無い子供…
…だが…奇妙に惹かれる…誰をも惹き付け、導く…
…そんな力がこの子にはある…そう思った…