始祖よ…
 
 透徹とした…碧い瞳を持つ我等が太公(父祖)なる存在よ…
 私は貴方に問いたい…
 或る事を…


 
―碧の行く末― 〜8〜
 

 其処は羌族のある村の外れ…
 
 羊に囲まれ、謎の物体の中で眠るその人物を…
 ある日…一人の少年が訪れた…

 その村の長老の一人に案内されて…

 「子牙様…この方が老子様です…」
 老爺はそう言って少年を振り返る…
 少年は落ち着いた物腰で穏やかに微笑み…

 ―そして静に口を開いた…

 「長老様、有り難うございます」
 少年の穏やかなその言葉に、老爺は一礼し「仕事があるから」とその場から離れた…
 立ち去る老爺を見送り、やがて老爺の姿が見えなくなると僅かに黙礼した…
 
 物体の中ですやすやと眠る人物にゆっくりと少年は近づく…
 「初めまして、老子様」
 少年は静に話し掛ける…
 しかし…その人物が起きる気配は見られない…
 「私は姜子牙、呂の族の者です」

 少年は構わず続ける…
 
 「老子様…羌の邑に住まう者としてお願いがあって参りました…」
 「…いいよ…あなたの懸念は解っているからね…」
 少年の言葉を遮る形で、不意にその声はそう言った…
 「有り難うございます」
 少年はそう言って一礼すると、踵を返した…

 「…あの…子牙様…老子様とはお話しできましたか?」
 暫くして村に戻ってきた少年に老爺は問いかける…
 少年の会いに来た人物は3年に一度しか起きないと言われる程の普段は寝てばかりの人物だったから…
 「はい…有り難うございます、長老様」
 そう言い、少年は会釈する…
 そんな少年に老爺は少し慌てた様に手を振り…
 「いえ…私は何もしておりませんので…」
 そう言った…
 「それでは長老様、僕はこれで…」
 そう言い少年は帰っていった…

 …始祖よ…彼の少年のこの行動は貴方の意志なの…それとも…
 …でも…どちらであったとしても…私が此処に在る事実(こと)に変わりはない…か