「…任務って…ナルトの任務は火影様の見張りですよね?」
 五代目の言葉にオレは思わず聞き返す…
 「ああ、そうだよ」
 それがどうした、と言わんばかりに五代目は答える。
 …まあ…下忍のナルトの見張りなんて、相手は五代目火影、その気になれば幾らでも振り切れるだろうが…
 …だが…
 「…なんで見張り役を増やす様な事を言うんスか?」
 …まあ…オレだって新米中忍…しかもやる気ナシ…
 …はっきり言って…オレ一人増えた所でどうって事ないんだろうけど…
 …『何か』が気になった… 
 「さあね」
 くすりと笑んで五代目がオレを見る…挑発する様に…
 「何故だと思う?」

 …そう『何か』が… 
 …引っ掛かった…

 「…興味あるのかい?」
 ニヤリと笑む五代目の表情(かお)… 

 …正直…興味はある…
 …だが…それ以上に何か…めんどくさいことになりそうな気がして…
 「……別に……」
 …そう言い掛けた時だった…

 「…さっきまで私とナルトは『何を』してたと思う?」
 オレの言葉を遮る様に言った五代目の言葉はオレにとって意外なモノで…
 「…な…なにって…賭けポーカーじゃないんスか?」
 …オレは思わずそう問い返していた。
 「……賭けポーカーね…まあ確かにね…」
 「……違うんスか?」
 「…まあ…確かに賭けはしているけれどねぇ…」
 …足下にばらまかれたカードを集め拾いながら思わせ振りな笑みを浮かべ…
 …そして『それ』をケースに収めて、五代目はオレに向かって放り投げ…
 …つい『それ』を受け取ってしまったオレを見て…
 「…そのカード…ケースから取り出してよく見てみな…気になる点はあるかい?」
 …そう言った…
 …そして『それ』を見てオレが気付いたのは…
 「…このトランプ…手作りみたいですね…随分器用なヤツが作ったみたいですが…何の変哲も無いトランプっスね…」
 …そう…何の変哲も無い…
 …気になる点か…
 …強いて言うなら…
 …間違いなく手作りのモノだろうに、一見しただけでは『そう』とは解らない程の『変哲の無さ』こそが『気になる点』だが…
 …それ以外は特には…
 …まあ…きっと凄く器用なヤツならこれくらいは…
 …めんどくせえし…そう言うことに…
 「……このカードはねナルトがある任務で創った特別なモノだよ…」
 …これ以上考えまいとするオレの思考を遮る様な形で五代目が言ったその言葉に、オレは一瞬驚きの余り思考が凍り付いた… 
 ……いま…五代目はなんて言った?……
 
 「…さてシカマルそれじゃあお前への任務だが…そのカードを今日から三日間お前に預ける、その三日の間にそのカードのどこがどう特別なのかを見つけておいで!」
 
 …五代目…いまなんて言いました?
 …なんか…オレはいま凄くめんどくせえ事を聞いた様な…

 ………
 …それからどれくらいかオレは呆然としていた…
 ………

 「ばあちゃん!シカマル!メシ取ってきたってばよ!!」
 ナルトのその声に振り向けば、そこには、高く積み重ねられたお重と大き目の水筒を持ったナルトがニヘヘといつもと変わらない笑みを浮かべて立っていた…

 …結局その日はそのまま泊まって行くことになり…
 
 …そして…

 …明け方…帰り際に…

 「シカマル!ばあちゃんから例のカード、預かったんだってばね、ならこの本も持って行くと良いってばよ!それにヒントがあるってばよ!」
 …一冊の本を差し出しながら…腕を振り上げてナルトが言う…
 「…大事なモノだからなくしちゃダメだってばよ?」
 …いつもの様に…いつもの笑顔で…

 …
 …でも…
 …『何か』がいつもと違う…
 …そんな気がした…
 …
 

 
ゆうぎ(ゲーム)の始まり―後編―


 …執務室をシカマルが出て行ってから暫く後の事…
 …シカマルが火影邸の敷地内から出た丁度その頃…
 …執務室では…
 
 「……あれで良かったのかい?ナルト…何もわざわざバラす様な真似しなくてもいいんじゃないのかい?」
 …書類に判を押しながら綱手がナルトに問い掛ける…
 …ナルトは手元の書類をパラパラと検閲しながら、所々に何かしら書き付けていく…
 …どちらも凄まじいスピードで…
 「…あれでいいんだよ…ばあちゃん、いま里は人手不足なんだ、使えるモノは使わないとね…」
 …ククッと嗤い…
 「…シカマルは結構頭良いし…まあ前から少し俺のコト気付きそうな感じはあったし…実際ほっといたって遅かれ早かれ気付いただろうしね…ちょっと鍛えればそこそこ使える様になるだろ…」
 …そう言う間も書類を繰るその手は止まらない…
 「…はあ…だからって『あの二つ』を渡すなんて…まったく…」
 …嘆息を吐く綱手の言葉に、ナルトは初めて手を止め顔を上げると…
 「…別に良いだろ『あれ』は『二つとも』俺が創ったんだし…ちゃんとそれなりに細工はしてる…シカマルが『それ』に気付いても『術』を解いて見る事が出来るのは最初の一つか二つ…まあ良くて三つってトコだろうな…それ以上は無理だよ…」
 「…シカマル以外のヤツの手に渡る可能性もあるだろう…」
 「…その点は心配要らないよ、ばあちゃん…ちゃんと奈良のおっちゃんに連絡しといたからね…」
 「…はあ…まったく手早いと言うか…ホントそつが無いヤツだね…あんたは…」
 
 「…んじゃあ!ばあちゃん!この書類チェック済んだから、ハンコヨロシクーv俺はシズネねえちゃん帰ってきたみたいだし、久し振りに『奥』の部屋でゆっくり休むから!それじゃあ何かあったらね!」
 そう言って山の様な書類をデスクに置くと、ナルトは後ろ手に手を振りながら執務室を出て行った…
 …言外に「久し振りの休みなんだから『何か』よっぽどの『コト』でも無い限り邪魔するな!」…そう言って…

 …机の上に増えた大量の書類と…それを置いて出て行った時のナルトの様子に…
 「…ホント…そつが無いね…」
 …そう言って冷や汗を垂らしながら微かに溜め息を綱手は漏らしつつも…
 …くすりと小さく笑みを浮かべた…


 ―そして…
 …話は戻って家へと帰ったシカマルはと言うと… 

 「……ハア……一体…なんでこんなめんどくせえことになっちまったんだ……」
 …大きく溜め息を吐きぼやくシカマルのその手元には一冊の本と小箱から取り出されたカード…
 …それはどこからどう見てもごく普通の…どこにでも売られているトランプにしか見えない…
 …しかしシカマルは知っていた…その『トランプ』が市販の『それ』では無く『誰か』の手作りのモノだと…
 …『それ』に気付いて直ぐの時には…「……器用な…そして暇な…ヤツもいたもんだ…」…そう思った…そして「…こんなモンどこにでも売ってるだろうに…」とも…
 …だが…
 …その考えは五代目・火影の言葉によって驚きと共に大きく変化していた…


 ―気になる点はないかい?―
 ―気になるのはそれだけかい?―
 ―……このカードはねナルトがある任務で創った特別なモノだよ…―

 …意味ありげな様子で言われた…五代目の言葉の数々が脳裏に次々と過ぎる…


 ………
 …確かに言ったよな…五代目は…『これ』を作ったのは…『ナルト』だと…
 ………
 …どう言うことだ?
 …一体…
 …これはかなり器用なヤツが作ったモンだぞ!
 …しかも…
 ………
 …最初は気付かなかったが…この『トランプ』否この『カード』にはなにかしらの細工がされてやがる…
 …こいつはただの『トランプ』なんかじゃねぇ…
 …五代目に言われなければ…
 …そしてめんどくさがってよく調べなければ…
 …ぜってー…気付けなかった…
 
 ………
 …『ナルト』のこと…ちょっと前位から…なんかあるんじゃないかって…気になってはいたけど…
 …でも…
 ………
 …もし…オレの考えが正しけりゃあ…
 …なにかどころじゃねぇ…
 ………
 …いや…もしっつうか…
 …たぶん…この本…タイトルとぱっと見た中身は…ガキ向けのお遊戯全集みたいだが…
 …だが実際は…
 …この『カード』と同じく…何か細工がされてやがる…
 …こっちのは…
 ……
 …たぶん…幻術だな…
 …それも…かなり複雑な…
 ………
 …どっちも下忍が出来る様な代物じゃねぇ…
 ……
 …となると… 

 ………

 …あいつが何を考えてんのかまではわからねぇが…
 
 …はあ…
 
 ……めんどくせえことになりそうなのは確かだぜ……

 ……でも…あいつの事は気になるし……

 …まあ…いっか…


 ―そして三日後の夕方…
 
 …珍しくも血相変えて里の中を駆けるシカマルの姿が見られた…

 …向かう先は…火影邸…


 ―さあ…ゲームの始まりだ…―

 …火影邸へと向かうシカマルの姿を火影岩の上から見やりつつ…
 …狐面を着けた幼い暗部はくすりと笑んだ…

                                   ―終わり―

 ―あとがき―
 遅くなってしまい申し訳ありません緋月様、RINです<(_ _)>
 遅くなった理由に関しましてですが…既にご存知かもしれませんが…
 …3月の中旬頃から体調を崩し寝込みがちになっていたのが原因です…
 どうも申し訳ありませんでした<(_ _)>
 …それで…内容なのですが…
 …どうも済みません<(_ _)>
 …これだけ長くなり、しかもお待たせしてしまったのにも関わらず、なんだかリクの内容を完全には満たせてない様な感じになってしまいました…
 …再度申し訳ありません<(_ _)>
 リクは【シカスレナル前提のバレネタ】の筈だったんですけど…
 …書き上がってみましたら…
 …なんかあんまりシカスレナルって感じじゃ…
 …これじゃあ単にシカマル&スレナルってだけですね…
 …しかも綱手様が随分出張ってますし…
 …バレネタに関しては…バレてるのはナルトがただの下忍じゃ無いってくらいだし…
 …やっぱり…S・Dシリーズのバレネタに通じる様に書こうとしたのが…
 …うう…スミマセン…(T_T)
 …『シリーズ設定とも設定外ともとれるもの』にしようとして…シリーズのバレネタのネタバレにならない様に…単発でも読める様にとしたのが悪かったんでしょうね…
 …でも…
 …リクを頂いた時…凄く書きたいネタがあったばかりに……
 …と言うわけで…『ゆうぎ(ゲーム)の始まり』としては取り敢えず終わりですが…
 …むしろバレネタとしては…これからが始まりっぽい感じです…
 …そちらはこれから少しずつ書いていく予定です…

 ―それではこの様になんだか不完全な感じのモノですが取り敢えずなんとか書き上がったものですので一応UP致します。
 ご不満があれば仰って頂ければ、時間は掛かると思いますが新たに書き直しを致しますので、どうぞ遠慮せず仰って下さいm(_ _)m

 ―それでは改めて申し訳ありませんでした<(_ _)> 

 
 ―…それと…いまだウイルスメールが多発しております関係から念の為に暫くメールでの発送を控えようと思います。
 
 ―申し訳ありませんが、どうぞご了承お願い致します<(_ _)>

                   ―それではまたの機会に―RINm(_ _)m