半身1―伏羲―

 ……我らは常に共に在った……
 我らが異端の生を受けたとき…
 我が王となった時…
 我ら二人を残し、総てが嵐に没せし時…
 我らが総てを再生させし時…
 我が天帝となった時…
 …そして…
 我らが故郷(ほし)が失われ、この地(ほし)に降り立った時……
 あの時まで我らは常に共に在った。
 そなたはいつまでも理解せぬのか…
 我らが故郷が失われし真実(ほんとう)の理由(わけ)を…
 失われしものは…過ぎ去った時は…
 決して取り戻せぬのだということを……
 なればせめてこの我が……
 誰でもないこの我が手で……
 そなたを誅そう……
 
 「幾ら女カでもこれでは動けまい」
 永久氷壁に封じ込めた女カを見ながら軒轅が言った。
 「時が経てば女カも落ち着くであろう…さあこの地と融合しよう…」
 それを受けて神農も言う。
 「否、時はあれに安息をもたらさぬであろう…むしろあれの狂気を深きものとするやもしれぬ……」
 「なれば伏羲、どうするというのだ……」
 「どうすればよかったというのだ……」
 我の言葉に皆が色めき立つ。
 「取り乱すでない、まだそうと決まったわけではない、だがその時は……」
 我はそこで口を閉ざし、皆の顔を見る。
 「その時は?」
 その我を皆が促す。
 「我があれを誅する……」
 「…伏羲、女カはそなたの…」
 「燧人様、だからこそ、あれが過ちを犯したその時は、我が止めねばならぬのです」
 あれがこの地の可能性を阻害するというのならば、あれが力でこの地を縛すというのならば……
 「それではせめて準備を手伝おう……」
 「貴方には既に見通せているのだろう……」
 「天皇様、ご指示を……」
 皆が口をそろえた……                                 ―つづく― 
 ―あとがき―
 実はこの半身は書いてから随分経っているんですが(というよりも暫くはそういった過去に書いたものをちょっと手直ししてUPということが多くなると思いますが)HPに載せるにあたり少しだけ手を加えました。それは一つはルビを消しました(最初にUPした物のルビがちょっと変な風になってたんです、そちらはもう直しましたが)
 それからこれを書いた当初はまだ始祖の残りの三人?(三柱?)の名前が分からなくて、多分、神農と軒轅はいるだろうと思い書いたんですが、後一人の名前が分からず、書いてなかったんですが、WSの仙界伝弐をプレイするうちに名前が出てきたので付け加えました。(仙界伝をやってない方ネタバレ済みません…)(-_-;)伏羲が燧人にだけ敬語なのは年長者だからという設定です(済みません…分かりづらくて…)ここら辺の手直しは一切無しです。
 青春文庫の封神演技完全データファイルと講談社文庫の封神演技、等を今回参考に致しました。