…カカシがカカシ曰くナルトの最高の笑顔にご満悦の頃…
…当のナルトはと言うと…
…自分の注文品が収められている箱の中にある品の中から、カカシに見られても困らない品を入れた包みを取り出して、笑顔を浮かべはしゃいで見せる…
…その様は…端から見れば無邪気な子供が欲しい物が手に入って歓喜しているのだろうとしか見えない…
…しかし…実の所ナルトは内心では…
(…あいついつまで監視しているつもりだ?まったく鬱陶しい…)
…と冷淡そのもの…
…表情と感情が完全に正反対…
…そのポーカーフェイスの完璧さは一介の下忍には有り得ぬ物…
(……うん?…この気配は…)
…覚えのある気配がカカシへと近付いているのを感じ内心で眉を寄せる…
…実際の表情は満面の笑顔のままで…
いつもと違うこと ―第2章―
―第4話―
…一方カカシもナルトより僅かに遅れてだが…自分に近付くその気配にピクリと眉を寄せ、嫌そうに舌打ちをし、しかし素知らぬ様子でナルトを見続ける…
「…そんな所で何をやってるんですか?カカシ上忍」
…カカシのいる木の上…その下に来てそう言ったのは、先程カカシが嫉妬し、殺気を向けた相手…山中家当主だった。
「…うーん?何をって決まってるでしょ…可愛いナルトを見てるんだよ…任務だしね」
…だから…誰にもとやかく言われる筋合いは無いと…言外に言う…
…自分は『ナルトの保護者でもある火影』からこの任務を受けたのだと…『ナルトの事を任された』のだと…
…己の過去は既に忘却の彼方にして…
…『…任務だしね』と言った、その言葉に込めて誇らしげに…
…何処か自慢たらしく言うその様は…恐らく本人無自覚であろうが悔しさの裏返しだろう…
「…そう言うわけだから邪魔しないでよ…(あの子の)傍にいるだけでも許せないんだから…」
…山中を一瞥もせず…視線はひたすらナルトを見つめつつも…鋭い殺気を山中へと放ちつつそう言う…
「…その任務の事ですがね…『…あの子の事は今日一日…火影邸(此処)にいて、此処で見ている』からあなたは気にせずきちんと任務をする様に、それと話があるので直ぐに来るように、と火影様から伝言です」
山中の言葉に、カカシは嫌そうに眉根を寄せるが…火影からの呼び出しとあっては行かない訳にもいかず仕方なく『瞬身の術』で…名残惜しく思いながらも、その場を後にした…
…カカシの気配が遠ざかったのを感じ…ナルトは僅かに薄く微笑った…
…先程から山中とカカシが何か話していた事をナルトは勿論知っていた…
…知っていたので…ナルトは…山中がカカシを何らかの方法で追い払ってくれたのだろうと察し、感謝し…
「…クッ…ようやく…仕事に入れる…ってばよ…」
…吹き出す様に…態とらしく…いつもと違う…でも…いつもの口調で言って…
…いつもと違う…でも鮮やかな笑顔で微笑った…
…そしてその頃…一人火影の執務室へと向かった、山中いのはというと…
…いのは既に火影の元を辞し…
…何故か執務室にいた、担当上忍の猿飛アスマに引っ張られる形で、火影邸の奥にある、ある一室へと連れて来られていた…
―其処は…畳が敷き詰められただけの…何も無い寂しい部屋だった…
「『ちょっと来いっ』て何なんですか?此処?」
いのはキョロキョロと部屋の中を見回しながら、アスマに問う。
「…元・修練部屋だ…」
アスマは部屋の入り口の所にあるスイッチを押して、部屋の明かりを付けながらボソリと言った。
「元・修練部屋?この部屋がですか?でも何で私を此処に?それに元って事は現在は違うんですか?」
「…ああ…正確には此処が修練部屋として使われていたのは、13年前まで…ここは…四代目が使っていた部屋だ…」
アスマのその言葉にいのは目を見開き…
「四代目の!?それってどういう!?……」
…そう問い掛け様としたその時だった…
「…だが…現在は…此処はナルトの部屋なんだ…」
嫌と言う程聞き慣れたその声がそう言った…
…その声の方向にいのが振り向くと、いつの間にいたのか…其処には…いのの父・山中家当主がいた…
―続く―