―暗部任務が終わり、火影邸へと帰り着いた時にはもう空が白んできていた…
―じゃあ明日お昼には家の店に来てね!―
…そう言って帰って行った山中のその言葉を思い出し…
「…今日は下忍任務はないから、何も無ければ昼前まで寝られるな…」
…火影邸の奥にある己の自室に入ると、そう呟いた…
…それにしても…
…絶対じいちゃん何か企んでるな…
…それは間違いない…
…まあ…とにかく…さっさと寝るか…
いつもと違うこと ―第1章―
―第1話―
―丁度昼前にナルトは起きた…
…起きると軽く食事を作り食べる…
火影邸の奥に隠された其処はナルトがまだ赤子の頃から使っている為、ナルトに必要なモノは総て揃っていた。
ナルトの仮住まいである『ドベのナルトの家』以上に…
…暗部の衣装も武器も、高度な忍術書も総てこの場所と他の場所に置いて、『ドベのナルト』の家には真実(ほんとう)を持ち込まない…
…ある意味其処がナルトの真実(ほんとう)の部屋だった…
…そしてナルトは其処から通じる抜け道を使い、仮住まいへと向かう…
…『ドベのナルト』としての行動を始める為に…
…仮住まいに幻術を張り巡らした抜け道を通り向かう…
…隠し部屋から仮住まいへの隠し扉を潜り、修行部屋の…外からは死角になっている場所で、その場所に来させていた、影分身を消し、同時に完全に殺していた気配を出す『ドベのナルト』の気配を…
…外の監視は気付かない…気付かれる様なヘマはしない。
…しないが…だが…
…カカシの野郎…なんで今日もいるんだよ!
…あいつ忙しい筈だろ!
…あー…一応念の為に影分身用意しといて正解だったぜ!
…まったく…なんだってあいつ急に熱心になったんだ?
…やっぱり…波の国の一件が原因か?
…でも…あいつが熱心になったのって…その前からだし…やっぱ時期が違うよな…
…まったく何考えてるか知らないが良い迷惑だ!
…そんな事を考えながら修行部屋を出る…
…隠し部屋にいた時、部屋に入る前に脱いだ黒いジャケットとズボンを幻術で隠し収納スペースの所まで向かう…
窓のすぐ傍のベッドの下の収納スペースはそのまま角度の関係で外からは死角になり俺の手元や収納の中は見えない、その死角でジャケットとズボンに掛けた幻術を解き一寸した細工を施し、扉の死角から出す、恰もいま収納から出したという様に…
…但し出されたジャケットとズボンは先程までの黒い色では無く黄色い、いつも『ドベのナルト』が愛用している物…
…だけど間違い無くさっきまで俺が着ていた物と同じ物…ただ細工が施されているだけ…
…俺の現在の格好は…大体普段と同じ…気に入りの黒の半袖Tシャツには『渦巻』の紋…これに黄色のジャケットを着て、揃いのズボンを履けば『ドベのナルト』の出来上がり。
…ジャケットとズボンだけじゃなくTシャツにも細工はされている、どちらも到底下忍が着る服にはされない様な細工…
…だからある意味これを調べられたら一発でアウト!
…誤魔化すのは一寸無理…でもまあ…これぐらいの方がスリルがあって良い…
…第一バレルなんて有り得ない…
…だって細工をしてるのは俺が着てるやつだけで、この家に置いてあるのは全部ごく普通の市販品…
…俺が着てる物を調べられるなんて、そんなヘマはしない…
…後は手入れの行き届いてない手裏剣とかクナイといった忍具…如何にも『ドベの下忍』が持ちそうな物を入れた『ドベナルト仕様のポーチ』を持ち、支給品のサンダルを履く、これは額当て同様アカデミーで支給される物だから『オレ』が持っていても全然おかしくない。
そして『イルカ先生に貰った額当て』を着ければ『いつものドベのナルト』が完成!
思い切り元気良く、イヤに成る程はしゃぎながら家を出る!
後は『イノ』の家に向かうだけ…
…なんだが…厄介なのはむしろこれから…
…里人はいつだって、『オレ』が何をしたって気に入らない…だから理由(かなり身勝手で理不尽なモノであってもだ)さえあれば、すぐ『オレ』に絡んでくる…目立てば尚のことだ…
…だが『ドベのナルト』が目立たない筈が無い…
…『オレ』がとってもおかしくない程度の行動とルートで、『奴等』の『気を引かない様に』…カカシにバレずに厄介事を回避しながら『やまなか花』まで向かわないと…
…まったく!カカシの所為だ!あいつが監視してるから『ドベ仕様』で『やまなか花』に向かわないといけなくなったんだから!
…あいつさえいなきゃ『ドベ』は『やまなか花』の少し手前からで良いのに!
…そんな事を思いながら俺は家を出て『ドベ仕様』で『やまなか花』へと向かう…
…その間も監視(カカシ)はついてくる…
…まったく…何時までいるつもりだか…
…あいつ今日は暗部の任務が入ってる筈だろ…
…暗部の任務でも遅れるようなら…
…それ相応の『処置』は執らないとな…
…ククク…
―続く―