……なんで…この場所に……

 …思ったのは…ただそれだけだった…


 
機縁―後編―


 ―…火影様に言われて向かった場所…
 …場所を聞いた時には…驚いた…
 …里人は…あまりいかないその場所…
 …その時は…偶然だと思った…

 …でも…

 …辿り着いた其処には…
 …暗部はおらず…

 …代わりにいたのは…

 …何故か…下忍七班の子供達…

 …何故?此処にこの子達がいる?…
 
 …ナルトは…
 …まだ解る…恐らく火影様が教えたんだろうけど…
 …でも…
 …サスケとサクラは?…
 …何故?…

 …ナルトが連れてきたのか?
 …否…それはないだろう…
 
 …あの子は…ああ見えて…警戒心が強いみたいだから…
 …自分の領域に他人が入るのを…極端に嫌う節があるみたいだから…


 …では…偶然?

 …確かに…サスケもサクラも…この場所が里では暗黙のうちに関係者以外立入禁止となっていることを知らなくてもおかしくはない…
 …知っていたとしても…やはり理由までは知らないだろうから…何かの拍子で入ってもおかしくない…
 
 …サスケが入れば…それを追い駆けてサクラも入るだろうし…

 …或いは…ナルトが入るところを見たのかもしれない…

 …だとしたら…其処に三人がいてもおかしくない…

 …だが…

 …問題なのは…現在あいつらが他国の暗部に取り囲まれているということ…

 ―…カカシは止め処なく考える…

 …木ノ葉の暗部はどうした?火影様の言っていた…この場にいる筈の暗部は?…

 「…あっ!ああ!カ…カカシ先生!!」
 サクラがこちらに気が付いて歓声を上げる。
 「…カッ!カカシセンセイ!!大変だってばよ!!」
 そしてサクラの声で気が付いたのかナルトもまた…

 …今回は…もう敵サンとっくに気が付いていたみたいだからいいけど…
 …味方が来たからって…敵に囲まれてる状態でそんな大声出したら…
 …相手に敵(こちら)が増えたって教えるようなモンでしょ…
 …まったく…
 …サクラもナルトもまだまだだね〜…

 …にしても…どうしてサスケのヤツ倒れてるんだ?
 …サクラかナルトを庇ったってとこかね〜

 …あいつもああ見えて結構アツイからね〜
 …ある意味まだナルトの方がよっぽど冷静かもね…

 
 『…カカシ?…あの写輪眼のカカシか…』
 『…どう思う?』
 『…違うな…』
 『…どうしてそう思う?』
 『…カンだ…』
 『…お前のカンは当たる…しかしそうだとすると…何故姿を現さない?』
 『………あのガキども…どう思う?』
 『…どういう意味だ?』
 『…噂の『守り手』とやらはいつまで待っても姿を見せる様子がないが…だが…この場にいないというのなら…何故オレ達は此程手間取っているのか?…そう問いたいのだろうお前は…』
 『…気のせいかとも思っていたが…なんかオレはあの…』
 

 …そいつらの会話は…はっきり言って俺には筒抜けだった… 
 …特殊な術での仲間内にしか聞こえない会話…木ノ葉では暗部クラスの者なら誰もが習得しているその術は、しかし里ごとの微妙な術の組立の違いや、実際に会話で用いる暗号などの為に部外者に…ましてや敵に内容を知られる事など本来なら有り得ない…
 …だが…
 …術の研究と暗号解読が俺の趣味だからな…残念だったな…おまえらの会話…俺には丸聞こえなんだよなー…
 …聞こえるわけないと思ってるんだろうが…
 …実際カカシには聞こえてないようだし…
 …だが…やはり奴等には他に狙いがあったか…
 …『守り手』…か…これまでにもこいつらみたいな奴等を護衛役として結構秘密裏に処理してきたからな…やっぱり…俺のことだよな…
 …ってことは…こいつら俺のことも目当てってことだよな…
 …ん?そう言えば…なんか…あの中に一人…否二人だな…やたらこっちを…っていうか…なんか『オレ』を見てるヤツが…
 …そう思って…バレル危険はあったが…その二人を少し注視してみることにした…
 …そうして俺は気が付いた…
 …そしてその直後そいつは、俺の方を見ながら口を開いた… 
 『…気のせいかとも思っていたが…なんかオレはあの…』
 …その言葉を聞いた瞬間…俺はそいつの首を瞬時に鋼糸で落としていた…
 …放っておいたならば…そいつが言ったであろう…続く言葉を予測し…そして『それ』を言わせぬ為に…


 『!!!』

 …唐突に…仲間の一人の首が落ちた…
 …何故なのか考えてみる…
 …そしてその攻撃がどこからされたものか…
 …攻撃をしたのは恐らく『守り手』…
 …何故こんな突然攻撃を仕掛けてきたのか…
 …それは恐らく…
 …あいつが言おうとした言葉…事実上最後の言葉となった『ソレ』にあるのではと思いながら…
 …不意に悟る…
 …ずっと気に掛かっていたモノはなんだったのかを…

 …そうずっと違和感を感じていたのだ…
 …『ソイツ』に対して…
 …オレのカンは鋭い自他共に認める程に…
 …そのカンがずっと告げていたのだ…

 …『ソイツ』の正体を…
 …恐らくあいつも気付いたのであろう『ソレ』…
 …あいつが言いかけたのは…
 …ああ…だからあいつは殺されたのか…

 …そしてそれからまた一つあることがわかる…
 …それは… 
 …タイミングのあまりに良すぎたその攻撃…
 …それは『ソイツ』にオレ達の『会話』を聞かれていたと言うこと…

 …オレは覚悟を決めた…

 瞬身の術で金髪の子供の前に現れる…
 …写輪眼のカカシが僅かに慌てた様な気がする…
 …目の前の子供は一見慌てているようだが… 
 
 …もうコレしか方法が無い…
 …目的を達成する為に…
 …オレは口を開いた…


 …俺のことを見ていた二人の内の一人…
 …内一人は鋼糸を使って首を落とした…
 …そして残る一人…
 …そいつがいま俺の目の前にいる…
 
 瞬身の術を使い俺の前に現れたそいつが口を開く…
 …現れたそいつを見て俺は気付いた…
 …もうこいつには気付かれているということを…

 『…オイ…あいつどういうつもりだ?』
 『何をする気だ!?』
 …敵残り二人の『会話』が聞こえてくる…
 …こいつらにはわかっていないようだ…

 「…我々の目的は二つ、一つは『うちはの少年を持ち帰ること、生死は不問』です、そして…」
 そいつがその目的を口にし、次いで言うつもりだろう言葉を言う前に俺は鋼糸を放った、その先は言わせるワケにはいかない!…そう思ったから…
 …だが…
 …放った鋼糸は弾かれたキンと言うすんだ音と共に…
 
 …なんだ?いまのは…クナイか?…だが…一体どうやって俺の鋼糸を察知した?
 「…成る程…いまの攻撃…コレは…鋼糸ですね…コレがあいつの命を奪った攻撃ですか…」
 …そう言ってそいつはその手に持つクナイを…正確には俺の鋼糸が巻き付いたクナイを左手に持ち替える…巻き付いた鋼糸の上から、クナイの刃の部分を…
 …そしてそいつはソレを強く引いた…
 …俺はそいつのその行動に拙いと思い、慌てて鋼糸を、チャクラを使い途中の部分で切り捨てる…
 …だが…そいつと俺の距離はそれほど離れていない…
 …切った鋼糸の落ちる様を…あいつらには気付かれただろう…
 …敵の残り二人と…そしてカカシには…
 …そして…恐らくは俺が回収した手元の鋼糸にも…
 
 
 …信じられないモノを見た…
 
 …ナルトの目の前に現れた敵のその忍…
 …どこからともなくそいつに放たれたのだろう鋼糸…
 …そいつがクナイで受け止めた鋼糸がのびる方向…
 …つながる先…
 …唐突に切れたソレが落ちた位置…
 …感じたチャクラ…

 …そして…瞬時に変わった…ナルトの表情…
 …無表情な…能面の様な…『ソレ』…

 …途端にがらりと変わった雰囲気は…触れると切れる様なモノだった…

 …そんなナルトの様子に不意に『ある事』が頭を過ぎる…

 …その『ナルト』が口を開く…

 「…カンの鋭いヤツがいたものだ…」
 そう言った瞬間ナルトの姿が消えた!
 …瞬身の術だということはすぐにわかった…
 …だが印を組んでいるのが見えなかった…
 …何処に!…そう思ったのも束の間…サクラとサスケの前に暗部装束を纏った一人の子供が姿を現した…

 …暗部の装束…黒のマントと狐の面にすっぽり覆い隠されその髪と顔は見えない…
 …だがオレはその暗部こそ『ナルト』だと思った…
 …同時に火影様が言っていたのも…噂の暗部も…そして…あの日出会ったのも…
 …『ナルト』だったのだと…

 …そして…ではやはりあの日慰霊碑の前にいたのも『ナルト』だったのだとも…

 暗部としての正体を現した『ナルト』は強かった!

 …いつの間にか…恐らくは瞬身で姿を消した時だろうが…
 …姿を隠していた残り二人の敵を瞬殺し、残す敵は後一人、ナルトの目の前に現れたあの忍だけだった。

 目前の敵の忍に凄まじい速さでクナイを投げ放つ…
 …投げ放たれたクナイは瞬時に幾千にも数を増やし敵を襲う…
 …しかし何故かその攻撃も先程の鋼糸同様ほぼ総て弾かれる…
 …その攻防に驚いてオレは見ているしかできなかった…
 「…やはり遠隔攻撃は効かぬか…ならば…」
 言うや否や再びその姿を『ナルト』は消した…
 …そして消えたと思った刹那『ナルト』は敵の背後に現れ、それを認識した次の瞬間には敵の忍は『何か凄まじい衝撃を受けて』吹き飛ばされていた…
 …凄まじいダメージを受け虫の息と言った状態のその忍に『ナルト』はゆっくりと近付いていく…
 …倒れ伏すそいつの前に身を屈め『ナルト』は恐らく何かの術を使ったのだろう…何かを聞き出すと、同時に『ナルト』は何時の間に取り出したのか、左手に持ったクナイでそいつにトドメをさした…
 …トドメをさした『ナルト』が、そいつの額当てを取ると、その直後にそいつの体は青白い炎に包まれて燃え上がった… 
 …『ナルト』は別段驚いた様子も無かったので、その炎は『ナルト』の術だろうことも容易く察しがついた…

 …不意にサクラとサスケのコトを思い出した…
 …あまりのことについうっかり忘れてしまっていた二人のコトを思い出し、そちらを見ると、二人は意識を失いその場に倒れ伏していた。
 …何時の間に…そう思いながらも…コレも恐らく『ナルト』の仕業だろうと…
 …そう思いながらオレは『ナルト』の前に姿を現した…

 「…なんと言ったらいいのかね…驚いたよ…ナルト…まさかお前がね…」
 「…カカシ…お前は『俺』と言う『里の最重要機密』を知った…この『存在』を知った者の運命は二つに一つ…記憶操作と死…このどちらかのみ…だがお前は俺にのうのうと殺されるなど冗談ではないだろう…カカシよ選ばせてやろう…記憶操作かそれとも俺と戦うか…俺が勝てばお前の…お前が勝てば…殺させてやろう…師の仇を…この俺諸共…」
 「…どちらもヤーダネ…」
 「…こんな時にもまだ巫山戯るか…俺が無害なガキなどではないということは充分に解っただろう…」
 「…ナルト…どうしてオレがここにいるのか教えようか?」
 「……理由など…どうせあの時と同じだろう…」
 「……やっぱりあの時の少年はナルトだったんだね…でもそれなら知っているだろう?…オレはお前を憎んではいないよ…狐のコトだって憎んだところでどうにもならないだろう…結局のところ…先生は全部自分で決めて、総て承知の上だったんだから…」
 「……………」
 「…それとオレがここに来たのはね…火影様のご命令だよ…お前を助ける様にってね…だから秘密を知られたからって気にしなくていいよ…言いふらしたりもしない…信じてくれないかな?」
 「……じいちゃんが………カカシ…あいつらはお前が家に届けろ…記憶操作はしておいた…あいつらの中では、お前と数名の暗部があいつらを助けて敵を倒したことになっている…お前が来たので緊張の糸が切れて気を失ったと言う事にな…俺はじいちゃんに報告しておく…」
 
 …そう言ってナルトは瞬身の術で姿を消した…

 「……取り敢えず…信じてくれた…そう思ってもいいのかな……」

 ……先生…いまからでも…遅くはないでしょうか?



 …二人が初めて出会ったのはその場所で…

 …カカシがその真実を知ったのもその場所だった…

 
                                  ―機縁―
                                     ―了―


 ―あとがき―
 お久し振りです、長らくお待たせしてしまい申し訳ありません、RINです<(_ _)>
 高杉あかな様、遅くなってしまい申し訳ありませんでした<(_ _)>
 
 なんとかこの後編で頑張って終わらせてみましたが、この後編前回以上に長くなってしまいました…
 そして既にご存知かも知れませんが、この後編をUPするまでに、前編のあとがきで書いた同設定のスレナル話をシリーズとして長編小説の棚で連載を始めました、ナルトとカカシの過去の出会いについてはそちらでご参照下さいm(_ _)m
 
 それとこれも既にご存知でしょうが…『螺旋の館』とRINはURLとメールアドレスを変更することになりました。
 高杉あかな様他リンクを貼って下さっている方には、後日正式にご挨拶をメールにてさせて頂こうと思っておりますm(_ _)m

 ―…それと…今回もリク小説のメール発送は、ウイルスその他やRIN個人の事情からも、見合わせさせて頂こうと思います、申し訳ありません<(_ _)>
 
 ―申し訳ありませんが、どうぞご了承お願い致します<(_ _)>

                  ―それではまたの機会に―RINm(_ _)m

 

 *済みません誤字脱字を発見修正しました<(_ _)>
  (11/18―PM)