町についても何も感じなかった。
育った町のはずなのに…何も。
記憶がないことでこんなにも喪失感があるなんて思わなかった…
でも、なんだか時折通る人を見ると無性にむかつく。何故だろうか?
分からない。
とりあえず『私』は墓場に着き見ると女性が泣いていた。
『私』は相手に年齢層を合わせて自分を創り墓場に入っていく。
「…泣いているのですか?」
「……?誰、ですか?」
「私は…旅の途中でこの町に寄ったただの人です。…知り合いがお亡くなりにでもなってしまったんですか?」
「………恋人だったんです」
『私』が聞くと相手は簡単に答えた。
「大好きだったんです」
…所詮は人間。
「戦いに、巻き込まれたんです。」
愚かだ。
「泣いていても、彼は戻らないのに…」
分かっていても
「此処で泣いてしまう」
やめられない。
「彼が、生き返ればいいのに」
『私』は笑った。
「…もし、生き返るのならば」
堕ちていけ。
「貴方はどうします?」
奈落の底まで、
「その方法を知っているといったら」
永遠に堕ちていけ。
「どうしますか?」
女性は俯いたままだった。