「兄さーん!ちょっと調べたいことがあるから出掛けてくるー!」
そう言って弟は慌ただしく家を飛び出して行った。
「ちょっ…!…アルっ!何処へっ…!…」
『せめて行き先ぐらい』そう思って呼び止めようとしても既に弟はいなかった…
―『研究』の事で…『何か』を思い立った弟が唐突にこうやって飛び出して行くのはよくあることで…
…この『時点(とき)』はまだ…大して気にしていなかった。
―虫の報せ―
―序―
…帰ってこない…弟が帰ってこない…一体どうしたんだろう…?…
頭の中をぐるぐると嫌な考えばかりが過ぎっていく…
―数日前の電話では…「どんなに遅くなっても今日までには帰る」と言っていたのに…それなのに…
…帰ってこない…
…ああ…心配だ…心配だ…大体昔っからあの子はしっかりしてるようで…どこか抜けていて…しょっちゅう迷子になって…
…ああ…どうして帰って来ないのか…?…
「ハッ!そうだっ!もしかしてっ…!…」
…あの子は『何かを調べる』と言って出て行った。
…それなら…
「…もしかして…研究所(ラボ)の方に行ってるんじゃあ…」
そう思って僕は慌てて電話に手を伸ばした。
―続く―
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〜以下続―