―ツゥー…
千年伯爵の頬を涙が伝った…
「?千年公?」
それを見て…どうかしたのかとロードが問う。
「…我輩ではありませン…アレンが…泣いているのでス…」
ゆっくりと首を左右に振り…伯爵が答える…
「!アレンがっ!まさかっ!あいつらに何かされてるんじゃっ!」
ロードは瞠目し、そうして背後にあるベッドを振り返る…
…その大きく豪奢なベッドの上で『眠る』のは白髪の『少年』…
「…イイエ…そう言うわけでもないようでス…ただ…アレンは苦しんでいるのでス…」
ロードの言葉を否定し、伯爵もそちらを見る…悲しげな表情で…
「…『アレン』…お前は『ノア』を覚えていないのニ…それでも同じく苦しむのですネ…」
そう言って伯爵はベッドの脇に立ち…そこに『眠る』…『少年』の頬を優しく撫でる…
…そう…『アレン・ウォーカー』の頬を…
―『ノア』の『望み』―
―1―
「…『アレン』…お前は『ノア』を覚えていないのニ…それでも同じく苦しむのですネ…」
そう言って千年公はベッドの上で眠る…『アレン』の『器』のその頬を優しく撫でる…
『そこ』に『アレン』の『心』が『いない』のを知っていて…
それでも…千年公は…少しでも『アレン』を慰めたいと思ってるんだろう…
だって…それは…僕も同じだから…
そう思って…僕も…『アレン』の髪に手を伸ばす…
「…『あの時』のことを…覚えていない…筈なのニ…」
…そう言う千年公の声が…震えてる…とても悲しそう…
「…折角…忘れてやり直す筈だったのニ…」
…とても…辛そう…
「…『人間』なんかに『また』肩入れしたりするかラ…」
…『あの時』のことを…思い出してるんだね…千年公…
「…こんなに苦しむことになるのですヨ…アレン…」
…あの7000年前のことを…
「…あいつらは…『災厄』から『世界』を救おうとした『ノア』を裏切った挙げ句…我輩を『イノセンス』の『力』で『浄化』しようとした『お前』を殺そうとしたのニ!…」
…千年公の慟哭…
…『僕ら』が生まれる前の事だけど…でも…知ってる…
「…千年公…ちゃんと…『僕ら』も憶えてるよ…」
…だって…遺伝子に刻まれてる…
「…我輩達も済まないことをしたと思っていまスv…まさか『子供達』にまで背負わせてしまうことになるなんて思っていなかったのでスv」
…深い深い…『ノア』の…
…ううん…
…裏切られて…総てを失って…深い憎悪に包まれた…
…『アレン』の強い憎しみと怨嗟の『声』と…
「…ホントは『全部』我輩が引き受けるつもりでしタv…」
「…気にしないで千年公…だって…これは…生まれてくることが出来なかった…『僕ら』の『恨み』でもあるんだからっ…」
…生まれることが出来なかった…『僕ら』の無念…
…一度は『浄化』されて消えた筈の『千年伯爵』が…また現れた『理由』…
…『あいつら』は思いつきもしないだろう…傲慢なあいつらは…
…『千年伯爵』と『アレン』…『ノアの王子』の…その『本当』の『関係』にも…
…まあ…その方が…僕らにとっても良いんだけど…
「…でも……アレン…大丈夫かな…」
…『ノア』が…総ての『記憶』を封じ…7000年の『眠り』についたのは…『ノア』の意志だった…
「…ねぇ…千年公…」
…その『望み』がなんだったのかは…『僕ら』も知らない…
「…『ノア』の『望み』ってなんだったの?」
…千年公は…知ってるみたいだけど…
「…『ノア』は…『アレン』に…『イノセンス』に…『何を』望んだの…?…」
…結局…『それ』が…すべての『鍵』…
「……やり直すこと…ただ…それだけですヨv…」
…そう言った千年公の顔は…とても悲しげだった…
―続く―