―ロードに『アレン』を『お越しに行って貰った』…

 …『長子』である『ロード』が『夢』の『記憶(メモリー)』を引き継ぐ『子供』だと言う事もあったが…それ以上に…

 …『アレン』はロードに甘いから…
 そう思って…

 …けれど…結局それでも駄目なのですね…

 「…『アレン』…」 

 …漸く『戻ってきた』と…『取り戻せた』と…そう思っていた『兄弟』…
 …引き止めたい…何処にも行かせたくない…そう思った。

 …だけれど…無理強いは出来ない。『それ』をすれば『アレン』が『壊れてしまう』から…
 …『アレン』であって『アレン』でない『この子』を…それでも愛しているから…
 

 
―『ノア』の『望み』―
              ―36―
 


 ゆっくりと開かれた『アレン』の銀灰色の瞳は涙で濡れていたけれど…
 …けれどそれでも…『強い決意』を『その瞳』に宿していた。

 …尤も…我輩には…イヤでも解ってしまうのですがね…
 …『アレン』の…『強い想い』は…
 そう…元々同じ『存在』だったから…繋がってる…

 「…アレン…行くのですカ?v」
 …『答え』はもう解っている…けれど我輩は問うた。

 …もしかしたら気を変えてくれるのでは無いかと…僅かな淡い期待を抱き…
 そして問い掛けた我輩を見て『アレン』は一瞬だけ哀しそうに表情を歪めると、ベッドから起きあがって降りると…
 「…千年公…いえ…お別れだよ…ブラザー…」
 ゆっくりと我輩を振り返り哀しそうな表情(かお)でそう言った。
 そして我輩は『アレン』の『その言葉』に眉をピクリと動かす。

 ―気になったのは…告げられた『別れの言葉』より…『アレン』の我輩への呼び掛け…
 …『千年公』ではなく『兄弟(ブラザー)』と呼んだこと…

 …まさか…?…
 そう思って我輩は口を開く。

 ―『まさか『アレン』は我輩が思っている以上に『覚醒』している』のでは?と…

 …そしてもしその上で出て行くと言うのであるならば…

 「…アレン…たった一人で…『運命』と戦うつもりですカ?v」
 脳裏に過ぎったその『考え』を否定して欲しくて…「『運命』ってなんのことですか?」そう言って欲しくて…恐る恐るそう問い掛ける…

 ―けれど返ってきたのは…

 「……ええ…だから…もう少し…もう少しだけ待って…オーギュスト…」
 切なくなる程哀しい微笑みを浮かべて涙を流し…
 「…そう…『クラウン』が覚醒める…その日まで…」
 そう言って『アレン』は『肯定』した。

 …『7千年前』と『同じ言葉』を口にして…

 「…ア…レ…ン…」
 そんな『アレン』に我輩は涙を流す。
 「…行かないで…行かないで下さい…お願いです…」
 涙を流して…そして我輩は『アレン』とよく似た『オメガ・ノア』本来の『姿』に再び『戻る』。
 「…『アレン』のままでいいんです。…『ノアの王子』のまま…我輩の…我輩達の傍にいて下さい…お願いですから…」
 その『本来の姿』に戻って『アレン』に訴える。
 
 ―『何もしなくても構わない。ただ傍にいて欲しい』のだと…
 そう訴えると…

 「……有り難う…」
 そうポツリと『アレン』は呟き…けれど…
 「…ごめん…」
 そう言って伸ばした我輩の手を振り払うと、『扉』を出現させ、その『扉』へと勢いよく駆け込んで行った。

                                       ―終わり―

 ―あとがき―
 どうも皆様RINです。『ノア』の『望み』、長かったですが漸く終わりました。
 …当初はここまで長くなる予定じゃ無かったんですがね…ハハハ…

 えーあんまり長引きすぎた挙げ句、途中でスランプとかにもなったので…時々この『エピソード』で回収予定だった伏線とか、張る予定の伏線とかが、書いたかどうか解らなくなったり、途中本人も混乱したりしながら書きましたのでもしかしたら途中変な部分があるかもと少々不安に思っております…(アレ?もしかして…書かなきゃバレなかった…?…アレ…?…まあいっか…)

 えー…でもまあ…ラストは予定通りです…(エピソード全体が異様に長引いた事を除いて…)

 …と言う訳で…何とか終わりましたので…宣言通り以前途中で入荷を休止した外伝エピソード『ロードの不満』を後日一挙入荷致したく思います(…以前も書きましたが…あの話は本当は第1話入荷時点で全部書き上がってたんですが…伏線のつもりで書いた内容が…もしかしたら感の良い方にはネタバレになるかな?と思い途中で休止しておりました)
 皆様長らくお待たせしてしまい申し訳ありませんでした。

 (…まあ…そんな奇特な方がおられるかどうかはさておき…)

 そして『ロードの不満』入荷後は『クロノ=クラウン』シリーズは暫くお休みさせて頂く事になると思います(『優先更新』期間も終わりですしエピソードも終わって区切りとして丁度良いので…)

                             ―それではまたの機会に―RIN―