―…それは…何処かへと連れ攫われた…エクソシスト達が…戻ってくる…少し前…


 …奇妙なことが起こった…
 
 …巨人形態のアクマ達が…唐突に攻撃を止め…一気に我々から距離を取った…

 …疑問に思う間もなく…次々とアクマ達がその場を退く…

 …一体どうしたのか?

 …そう思っていた時…

 …最後のアクマが口を開いた…


 ―ノアの王子―
        ―1― 



 「…残念だったなあー…エクソシスト…」
 ―ニィ…
 …そう嗤いアクマが言う…
 「どういう意味かな?」
 そのアクマの言葉にフロワ・ティエドールは眉を寄せる。
 「伯爵様からの伝言(メッセージ)だ…」
 …そうアクマが言った次の瞬間アクマの口をついて出た『声』は…
 「『鍵』の担い手『ノアの王子』が我輩の下に戻りましタv祝いに取り敢えず今だけはお前達を見逃してあげましょウv」
 …それは伯爵の声…
 「!『ノアの王子』だとっ!!」
 伯爵の言葉に目を見開きブックマンがそう驚きの声を上げる。
 「知ってるのですかな?ブックマン?」
 ブックマンの言葉に、フロワ・ティエドールは振り向きそう問い掛ける。
 「…ええ…まあ…少しは…」
 …珍しくブックマンが言葉を濁す…
 「…ですが…見逃すのは今回だけでスv…『あの子』が戻ってきたのでこれで心置きなく『世界』を滅ぼせまスv」
 「…なっ…んだとっ…」
 ―心置きなく滅ぼせる…それはどういう意味か?
 …まさか?まだ本気ではなかった?…その気になればいつでも滅ぼせたと?…
 そんな疑念がその場の者達の脳裏を過ぎり…彼等は恐怖する…
 …但しただ一人…ブックマンのみは異なる理由で…
 「…恐いですカ?v大丈夫ですヨv優しい『あの子』のためにも苦しませずに終わらせてあげますかラv」
 ―アハハハハハッ!v
 そして伯爵の甲高い笑い声が響いた後…
 「…以上が伯爵様のお言葉だ…残念だったなエクソシスト『ノアの王子』が戻られた!伯爵様の勝ちだっ!!」
 …そう言って笑ったのはアクマ…
 ―ギャハハハハハハッ!!
 …笑いながら…その最後のアクマも立ち去った…
 …凄まじいスピードで…
 
 ―エクソシスト達に…恐怖と混乱を残して…

                                            ―続く―