―『ノアの王子』が伯爵の下に戻った…
―…その言葉に…ブックマンは蒼白になる…
…ブックマンである自分とて『ノアの王子』に関しては『正確』な所は知らない…
…だが…ただ一つ確かなことは…
―…『ノアの王子』…其は『イノセンス』を…『イノセンスのハート』を…『無』に帰す存在…
…そう言われていることをブックマンは知っていた…
―ノアの王子―
―2―
「…ブックマン…『ノアの王子』とはいったい…」
沈黙を破り…そう最初に口を開いたのは…フロワ・ティエドールだった…
「…私の記録にも…その名はそう出ては来ぬ…私にも解らぬことの方が多い存在だ…」
「…それでも構いません…教えては貰えませんか?」
言い淀むブックマンにフロワ・ティエドールは更に問う。
…嘆息を吐き…ブックマンは語る…
「…フウ…『ノアの王子』その名は伯爵と『ノア一族』が血眼になって捜し続けていると言う『ノアの至宝』の一つを指す名…」
…重々しく…
―ブックマンの口が重い…
「…『ノアの至宝』?…それはいったい?…」
…それに疑問を感じつつも…フロワは問う…
「…それについても詳しくは知らぬ…ただ…伯爵とノア一族の『悲願』とやらの成就のためにどうしても必要な『存在』だと言われておる…」
「…伯爵とノアの悲願?」
…そんなものが?…そう思い問う…
「…『奴ら』の言う所の…『神』とやらとなにやら関係があるらしいが…私も確(しか)とは知らぬ…が…『奴ら』にとって『世界の終焉』はその『神』と無関係ではないらしい…」
…正確な所を知らないと言うブックマンの言葉に…では仕方ないと頷き…
「…なら…『ノアの王子』について他には?あなたの驚きようから言って…まだなにか知っているのでは?」
…そう続けて問う…
―続く―