―其処は…江戸城から少し離れた丘の上だった…
「…あの日の雪のかわりかな…花びらが…舞ってる…」
丘の上で…一本だけある木のもとに…十字の墓標がたっている…
…刻まれたその名は…
「…マナ…」
…マナ・ウォーカー…アレンの養父の名…
…そう…其処は…アレンの養父が眠る墓…
…アレンは…クロウリーに昔この国に来たことがあると告げ…大切な人の墓参りがしたいと告げて此処に来ていた…
…折角近くまで来たから寄って行きたいと…
―ノアの王子―
―16―
…覚えているのは…『11年前』…
「…あの時…千年公に…会わなければ…?…」
…いや…結局は同じか…
「…どう足掻いたって…『僕』が…『ノアの王子』であることに変わりはないんだから…」
…それに…
「…『あの時』…千年公に会わなかったら…きっとあんたには会えなかった…」
そう言いながら僕は…目の前の黒い十字の墓標を見る…
『MANA WALKER』と刻まれた…その墓標を…
「…あんたは…『僕』が『ノアの王子』だってこと…知らなかったけど…でも…あんたの『MANA』って言う『名前』は…元々『ノアの王子』に最も親しい『ノア』に与えられる『名前』だったんだ…」
…そのことも…あんたは知らなかったのかも知れないけれど…
「…確かに…僕は…あんたが思っていた通り『ノアの一族』じゃあない…」
…だって…僕は『ノアの子供』じゃないから…
…でも…あんたが知らなかっただけで…僕は…
「…ホントは…」
…『ノアの王子』…『クラウン・ノア』と呼ばれる『存在』…
…『アレン・クラウン・ノア』…それが…『僕』の…『ノアの王子』の『名前』…
…『ノアの王子』としての…『僕』の『名前』…
…『ノアの王子』…それは…『ノアの一族』であって『ノアの一族』でない者…
…そして…『ハートの適合者』として『エクソシスト』にもなりうる者…
…『イノセンスのハート』を『イノセンス』でなくしうる者…であり…同時に…『イノセンス』と『ノアの魔』を…消せる者…
…『千年伯爵』を…消しうる可能性を持った…唯一の存在…
…でも…
…同時に…『ノア』を…『ノア』の『神』を…目覚めさせる…者でもある…
…そのことも…やっぱりあんたは知らないんだろうけど…
「…もし…知っていたら…あんたはどうしていたのかな…?…」
…やっぱり…『僕』の『記憶』を封じた?…
…それとも…
……………
「…ねぇ…マナ…どうしたらいいのかな…」
…僕は…みんなが好きだ…
「…だから…みんなが傷つくのが嫌だ…」
…でも…
「…みんなに…『あの事』を知られたくないんだっ…」
―…泣きそうになる…
…知られたくない…『ノアの王子』の『正体』をっ…
…『ハートの鍵』の『本当』の『意味』…
…『ハート』の…『正体』をっ…
…知られたくないっ…
…だって…知られたら……
「…みんなに…『悪魔』だなんて…言われたくないんだ…マナ…」
…きっとそうなったら…僕は…耐えられない…
「…言われたく…ないよ…マナー…」
…先延ばしにして…逃げることしかできない…弱い僕を…どうか…許して…
―膝に顔を埋め…そして…僕は泣いた…
―終わり―
―あとがき―
皆様どうもRINです。
長らくお付き合い下さりどうも有り難うございます。
最終章エクソシストサイド第1エピソード『ノアの王子』如何でしたでしょうか?
ラビやブックマン・ティエドール元帥と共に、皆様方には色々お悩み頂きながらお読み頂きましたが…皆様方におかれましては、この最終話の16話で『ノアの王子』についてはある程度お解り頂けたかと思います…
そしてブックマンが気にした『矛盾』についても、一足早く解消されたことでしょう…
…新たな疑問も発生したでしょうが…その答えは…以降のエピソードの入荷をお待ち頂くこととなります…暫しお待ち下さい。
…様々な形で伏線は張り巡らせておりますので、新エピソードが連載開始されるまでどうか皆様推理をお楽しみ下さい。
―それではまたの機会に―RIN―