―三忍の一人・綱手姫が五代目候補として里に戻り、五代目火影となったその日…
 綱手は火影邸の奥に、何故か13年間の間ほぼ当時のままの状態で遺されている四代目の私室で、ある一人の忍と向き合っていた…
 「……これが…真実だと…」
 …向き合っていた…
 「…ああ…」
 …ある一人の忍と…
 「……これが…お前の…」
 …里と…
 「…お前と…お前の一族と…」
 …ある一族と…
 「…里と…火影と…この火の国が…」
 …己が一族の…
 「…お前達と交わした…」
 …契約と…
 「…そうだ…だから…気に病む事はない…」
 …そう言ったのは黒衣の暗部装束に身を包み、薄紅色の狐面を着けた少年だった…
 「…我々もまた忍…忍は道具なのだから…」
 …真実…


 
奥の真実―序―


 「…三代目は…猿飛先生は…よくも…」

 …綱手は火影の執務室で、ある忍と出会った日の事を思い返していた…

 「…それが忍です。綱手様」
 そう言ったその忍は黒衣の暗部装束に薄紅の狐面を着けた子供だった…
 …尤も淡々とした冷たいその声音はとても子供のモノとは思えぬモノだったが…
 …そう…子供特有の声変わり前の声の高さでありながら…
 …どこか低いその声の主の…仮面の下の顔を…
 …少年の普段の表情(かお)を知る綱手はやるせなくて堪らなかった…
 …少年の現在(いま)の仮面の下の素顔を思うと…

 …しかしそんな綱手の思いを別に…子供は語る…忍の顔で…
 「忍は道具です」
 きっぱりと言い…
 …「解っておられるでしょう」とそう念を押す、その姿は彼の少年とは程遠く…
 …しかし間違いなく…彼の少年で…

 …その真実を知ってしまった綱手は…
 …現在(いま)決断を迫られていた…

 …子供が語った…
 「…俺は尊敬しているんです…先代を…そして…火影を…」
 …その言葉に…
 …程遠くとも重なった…
 …彼の少年の…
 …あの言葉とあの瞳が…

 …そうして綱手は決断を下す…

                                  ―続く―