「……も…嫌だ…なんで…僕ばっかり…」
パキリ…呟いたと同時に持っていた羽ペンが折れる。
「…僕は宰相だ…なのになんで…」
ブツブツと白い長衣を纏った男が呟く。
「…クロス…」
ボソリとそう呟いた時男の眼鏡の向こうの瞳には剣呑な光が宿り…
「あいつが全然帰ってこないからー!!」
そう涙混じりに叫ぶと…
「……フ…フフフー…ミーテーロー…」
俯き暗い声で笑った後…地を這う様な低い声でそう呟いて…
「絶対絶対見付け出してやるー!!」
そう叫んだ。
―プロローグ―
―1―
「……うぅ…もう…ダメ…」
そう呟いて羽ペン片手に書類の山に突っ伏すのは眼鏡を掛けた巻き毛髪の男性だった。
そんな男が突っ伏す机にドサリと更に書類の山が置かれる。
「…仕事して下さい…宰相…」
書類を追加した人物は…疲れ果てた様子でそう言う。
その声に机に突っ伏していた人物…『宰相』と呼ばれた男は声の方を見上げ…
「…リーバーくん…そうは言われても僕もう限界…」
…力無い声でそう言って…そしてまた突っ伏す。
そんな『宰相』にしかし彼・リーバーは険しい顔をし…
「そんなことないでしょう…さっきまでサボって変な魔導実験してたじゃないですか…」
そう言って「騙されませんよ」と続けた。
「変な実験じゃないよ…『アレ』にはちゃんと意味が…」
「どんな意味があるって言うんですか?」
リーバーの言葉に顔を上げて答える宰相の言葉を途中で遮る形でそう問い掛け…
「…どうせまた下らない『理由』なんじゃないですか…」
そしてそう疑いの眼差しを向けて問うリーバーを机に突っ伏したままで、チラと見上げて宰相はボソリとその『理由』を呟いた。
―続く―