…意識を取り戻した少年のその言葉に驚いた…
 …色々…聞いてみたくて連れてきたのに…
 
 …でも…あの瞳…綺麗だった…
 …あの瞳を見ることが出来た…それだけで連れてきた甲斐があったのかも知れない…

 …そう思いながら…取り敢えず街から医者を連れてきた…


 
ラーズグリーズの出会い―3― 


 「…記憶は…頭を打ったショックでしょう…」
 ―目や頭…少年の体の様々な所を調べ…その医者は言った…
 「…目の方も同様だとは思います…でも…左目は…僅かですが…瞳そのものに傷が付いています…右目の方は一時的なものでしょうけど…左目はもう…それに…右目もそれに引きずられて…視力は落ちると思います…」
 気の毒そうに言いながら…医師は少年の目を包帯で覆う…
 …右と左…それぞれ別々の薬を染み込ませたガーゼを目に当てて…
 
 そして医師に話があると言われ…医師を別室に案内した…
 少年をいまは1人にしてあげた方が良いと言われてのことだった…
 案内した別室で…医師は薬を取り出しながら言った… 
 「…こちらが右目でこちらが左目…それからこれが傷薬と打撲の薬…それぞれここに書いてある時間毎に替えるようにね…」
 そう言って私は薬を渡される…
 「…はあ…」
 …なにをやってるんだろう…私…
 そう思いながらも受け取る。
 「…彼…キミの…恋人かい?」
 ―!
 医師の唐突なその言葉に驚く!
 「!まさかっ!崖下で倒れていたのを見付けただけですっ!」
 …突然なにを言い出すのだろう!この人間はっ!…
 「フフッ…冗談だよ。…ただキミが彼のことをとても心配していたみたいだったから言ってみただけさ」
 そう言って医者が笑う。
 しかしすぐに笑みを消し…真剣な顔をし…
 「……でも…それじゃあ…彼がどこの誰なのかは解らないんだね…」
 そう言って医師は嘆息を吐く…
 「…名前だけなら…彼が着てた服のボタンの裏に書いてあったから…」
 「…そうか…じゃあ名前だけか…」
 …良かったのか…悪かったのか…そう小さく呟き頭を掻く医師の様子が気になって…どう言うことかと聞いてみる… 
 「…彼…なにがあったのか知らないけれど…体中凄い傷だらけなんだよ…崖から落ちただけなら普通あんな風にはならない…一体どういう生活をしていたのか…体中古傷だらけで…しかもその中には銃で撃たれたような傷跡もあったし…まあ…1番気になるのは…あの左腕と左目…どういうことになれば腕があんな風になるのか…それに左目は…もしかしたら…元々見えてなかったのかも知れないなぁ…あんな風な傷跡があるってことは…まあ…とにかくあまりいい環境で暮らしてはいなかったみたいだからね…それで思ったんだよ…もしかしたら彼にとって記憶を失ったことは幸運な事なのかも知れないとね…」
 そう言って…医者は帰っていった…

                                            ―続く―