∞螺旋の運命×運命の螺旋∞
             ―第1章―



 「…ただ…俺多分今年も卒業試験落ちることになると思う…」


 「…ゴメンじいちゃん…今年『オレ』が受かっても奇妙(おか)しくないように色々してくれてたのに…」
 …悲しげに俯き呟いたナルトの様子が脳裏に焼き付いている…

 …それを思い出して火影は思う…

 …おのれミズキ…どの様な処罰を下してくれようか…と…


 
三度目の卒業試験―8―


 …そして…その後の会話を思い出し…
 …その時のナルトの様子を想い…

 …火影は…声には出さず…ナルトに詫びた…

 …その時の『笑顔』を思い出して…
 

 「…ところで…ナルト…お前…もしやあやつのことが嫌いなのか?」
 「……へ?……じいちゃん?なんのこと??」
 「…いや…なんのって…お前…『あれ』はいくらなんでもやりすぎではないか?」
 暗号を誤魔化す為のカモフラージュにしても『あの落書き』はいくらなんでも酷すぎなのではと思っての三代目の言葉だった…
 ナルトは以前父である四代目を尊敬していると言った…
 …それは『ドベのナルト』ではなく『素のナルト』が言った言葉だった…
 …確かにナルトは総ての事情を知ってはいたし、理解もしている…
 …ナルトは優れた忍びでもある…
 …だが…だからこそ…言葉に裏の意味があるのではないかと…
 …そう思ってしまうのだ…
 …自身も忍びであるがゆえに…

 …『尊敬』という言葉に隠された意味を…

 「ああ、アレね…じいちゃん気にしすぎ!別にアレはそんなんじゃなくて…ただ…」
 『…ただ…』…そう微かに俯いて呟きそして一瞬口ごもって…
 …しかし直ぐに顔を上げて笑って言った…
 「…アレは…なんでもない…ただのイタズラだから…じいちゃんは変な心配しないで!…俺が父上を嫌いなんて…そんなコトないからさっ!」

 『それじゃあ!俺もう行くから!』
 そう言って片手をフリ…窓から出て行った…ナルト…

 …その『笑顔』は…

 …他の者なら気付かなかったであろうが…

 …ソレは…

 …どこまでも…切ないまでに…綺麗な…

 …その『笑顔』は…


 …火影には…
 
 …泣いている様に見えた…
 
 …父が恋しいと…母が恋しいと…

 …心配を掛けてゴメンナサイと…

 …泣いている様に…

 …泣いているのを誤魔化す様に笑っている様に…

 …泣くコトがデキぬと…

 …泣き方を知らぬ子供が…

 …そして…

 …心配を掛けたく無いと…

 …優しい子供が…

 …泣けぬ変わりに笑っている…

 …そんな表情(カオ)だと…

 …火影は思った…


                                  ―続く―