斉―0―
封神計画が終わり仙道達は新しい仙人界へと去った。
その後事後報告に来た四不象と武吉によって、武王は太公望が仙人界に帰っていない事を知った。
あれから一年が経とうとしていた、そんなある日の事だった。
執務室ではいつも通り、武王が周公旦にはりせんで叩かれていた。
それを見ていたのだろう、軽やかな笑い声と共に甘い桃の香りが窓の方からした。
「相変わらずじゃのう、おぬしらは」
「うるせえな、笑ってないでお前も……」
手伝えと言いかけてハッとして武王は振り向く、見ると弟の旦も同じように目を見開いている。
「言っておくがわしは手伝うつもりはないからの」
ピッと指を立てて、その人は笑っている、別れたあの日と、出会ったあの日と変わらないその姿でそこにいた。
「な、そんなことより!お前、今まで何処に行ってたんだよ、みんな心配して…」
「まあ、待てわしにも色々と事情というものがあるのだ!」
太公望は武王の話を遮ってそう言うと、コホンとわざとらしい咳払いを一つして続ける。
「今日わしが来たのは他でもない、おぬしらの子を見に来たのじゃ」
その言葉に武王が照れたように笑う。
「な、なんだよ…お前知ってたのかよ…それで来てくれたのか?」
「うむ」
「そうか、それなら早く邑姜の所に行こうぜ、あいつ、いま後宮に居る筈だから…」
武王は太公望の手を引っ張って、急ぎ足で執務室を出ようとした。がそれは周公旦によって阻まれた。
「お待ちなさい、小兄様!さぼろうとしてもそうはいきませんよ!」
「な何言ってやがる旦、俺はただ太公望を後宮まで案内してやろうと思って…」
「案内なんて太公望には必要ないでしょう!」
「何を言っておるおぬし等、確かに案内は不要だがわしが後宮に行くのはやはり不味いであろう」
「何言ってやがる太公望、お前は俺にとっては親父みたいなもんだし、邑姜はお前の孫みたいなもんなんだろ、後宮だろうがどこだろうが気にするなよな」
らしくないと武王が笑う。周公旦も頷く。
「そうですよ太公望、この国で貴方が勝手に入ってはいけない場所は一つだけです!」
「え、どこだよ、旦?」
弟の言葉に怪訝そうに武王は問う。
「桃の貯蔵庫です!!」
周公旦はキッパリと言い切った。
武王がその言葉に吹き出し、太公望は憮然としてそっぽを向いた。
―つづく―

