斉―3―
城に着いた楊ゼンと武吉はいきなり拘束されそうになった。どうやら街で情報収集した時に怪しまれたのが原因らしい。
しかしその時、城に到着したある人物のお陰で二人は事なきを得ることが出来た。
「お久しぶりです、楊ゼンさん、武吉くん、太公望さんに会いに来たんですね」
そう言ったのは、今や周の王妃となった邑姜だった。
城に入って直ぐに三人は太公望の眠る部屋へと通された。そこには出会った頃と少しも変わらぬ、太公望の亡骸があった。
それを見て泣き崩れる武吉を横目に、楊ゼンは奇妙な違和感を感じていた。
「太公望さんは十年たったら自分は死ぬと、そう言ってました…私たちはてっきり死んだことにして欲しいと言う意味だと思っていましたが…」
邑姜の言葉に不意に楊ゼンはある可能性に気付く…
(そうか…だとしたら…)
「武吉君、邑姜君、もしかしたら師叔は生きているかもしれませんよ…」
「え…」
「それはどういうことですか…」
口々に問う二人に楊ゼンは邑姜に問い返す、師叔は最後の戦いについて話したかと。
何も聞いていないと、そう答える邑姜に楊ゼンは詳しくは言えないがと前置きして話す。
「師叔は最後の戦いの時にとても大きな力を手に入れたんです、ですからその力を持ってすれば或いはと…それにこの遺体にはどこか違和感があるんです…それがなんなのかまでは解りませんが…」
「それじゃあ、お師匠様は…」
武吉が言いかけたときだった。
「失礼します、王妃様」
そう言って一人の少年が入って来た。
その少年は太公望に似た顔と声で言った。
「あっ、お客様ですか、それでは僕は失礼して…」
そして出て行こうとした少年を邑姜は呼び止めた。
「待って下さい、呂望君、彼等はあなたのお父様、呂尚さんのお知り合いです」
その言葉に呂望の顔色が変わった…
―つづく―
―あとがき―
邑姜ちゃん登場です、次回は未来の成王・誦君登場…予定…
太公望(伏羲)は(出番に)間に合うかどうか…苦しいところです…
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