「あ、アレン…!?」

「モヤシ…!」

思わぬ人物の出現に、俺達は武器を構えるのも忘れ、呆然とした。

そんな俺達の心情も知らず、アレンは無邪気に言った。

「あっ、鍛錬をしていたんですね!ごめんなさい、邪魔をしてしまって…」

「あっ、いや……鍛錬っつーか…」

まさか、「お前を巡って決闘してた」とは言えず、俺とユウは気まずげに目を合わせた。

「そうだ!これ、お裾分けです。鍛錬の合間にでも食べて下さいね!」

そう言いながら、アレンは抱えていた袋から何かを取り出し、俺とユウの手に握らせた。

「ジェリーさん特製の肉まんです!美味しいですよ〜」

「……あ、ああ…」

「さ、サンキューな…」

とりあえず礼を言うと、アレンはにっこりと微笑み肉まんを頬張る。

か、可愛いさぁ…////肉まんよりもアレンを食べてしまいたいさ〜///

ふと隣を見ると、ユウも俺と同じように真っ赤になっている。まぁ、この天使の笑顔を見せられたら誰でもそうなるよな。

「食べておける時に食べておかないと。いつ何が起きるか分かりませんし。僕、二人が怪我したりするのは嫌ですから」

「「……!」」

その言葉に、はっとした。

アレンは優しいから、仲間が怪我をしたら何よりも悲しむだろう。

なのに俺達はアレンの気持ちを考えず、自分の想いだけで決闘をしようとした。どちらもアレンを譲る気は無いから、少なからず怪我を負っただろう。

そうなれば、アレンはきっと悲しむ。自分が原因だと分かったら、自分を責めてしまうかもしれない。

最低さ…。俺は…俺達は、誰よりも愛しいあの子を悲しませるようなことをしようとしていた…。

「じゃあ、鍛錬頑張って下さいね!」

何も知らないアレンは満面の笑顔を浮かべ、手を振りなから去っていった。

後に残された俺達はというと―――…。

「……なぁ、ユウ」

「…ああ?」

「俺から言い出しといて何だけど、決闘のこと無かったことにしねぇか?」

「…奇遇だな。俺も今同じことを考えてた」

ユウは肉まんを一口食べると、言葉を続けた。

「…今回はモヤシに免じて許してやるよ」

「……その上から目線がすっげームカつくけど………まぁ、いいさ。俺も、アレンに免じて許してやるさ」

でも忘れんなよ、ユウ?勝負はまだまだこれからだってこと。

今度は平和的なやり方でアレンの心を手に入れてやるさ。

ユウには絶対、負けねぇからな!









†END†
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