…よく…聞いて…アン…
…わたしは…
「…シャブラニグドゥ…わたしはあなたを封じるわ…」
「…スィーフィード………は…どうしている…」
「…あの子は…どちらにもつかないし、運命も知らないと言ったわ…」
「…そうか…」
「…あの子の想いは痛いほどよく解るわ…だから…」
「…私を封じる…か…」
「…そうよ…現在のままではわたし達…どちらも互いに相手を滅ぼせない…そうでしょう…」
「……確かに…そうだな…」
「…だから…わたしはあなたを封じて、あの子に未来を託すわ!!」
…そう…あなたに託すわ…人間としての…あなたに…
…………アン…わたしの…いえ…わたし達の…大切な…い…も…う…と…
神話の始まり―1―
「…ねえちゃん…いや!しっかりして!」
突如目の前に現れ倒れ伏す黒い髪の女性を、銀色の髪の少女がしっかりと抱き抱えて揺すり叫ぶ…
「…よく…聞いて…シャブラニグドゥを…封じた…わ…」
少女の叫び声に…うっすらと瞳を開け、途切れ途切れに女性は云う…
「…ねえちゃん!…それっ!!」
女性の言葉に少女は一瞬その瞳を見開いて…そして呼び掛ける…
「…あなたに…託すわ…わたしの最後の…を…だから…」
女性は少女に構わず言葉を続ける…
「…ね…ねえちゃん……」
女性のその弱り切った様子に…少女は悟る…
「…ごめんなさい…どっちにもつかないって…あ…た…言って…のに…」
…もう彼女が長くはないのだという事を…
「もういい!!もういいから!分かったから!…黙ってよー!ねえちゃん!」
…分かって…しまった…彼女が…何を言おうとしているのかを…
「…せめて…少し…だけでも……い…から…人間としてでいいから…お願い…神につかなくてもいいから…」
「ねえちゃん!もう分かったから!これは…あたしが確かに預かったからっ!」
少女は手元に光り輝く何かを…幾つか抱えて…そう言った…
「…お願い…モ……ア…ン…」
そうして女性はそれだけ云って力尽き…淡い光となって消えて逝った…
―続く―