…あなたに…託すわ…わたしの最後の…

 …ねえちゃん…
 …確かに預かったよ…
 …ねえちゃんの…最期の…力…

 …光と闇の均衡が崩れかけている現在(いま)だけだけど…

 …それでも…

 …確かに預かるからね…
 …ねえちゃんの…
 …未来への希望…


 
神話の始まり―2―


 淡い光となって消えてしまったねえちゃん…

 …でも…
 そのすぐ後に…そいつはやって来た…

 「ねぇ…そこのお姉ちゃん…そんな所で何やってるの?」
 丘の上で…ねえちゃんから預かったモノを両腕に抱いて…蹲り声を殺して泣いているあたしに、そいつはそう話し掛けて来た…
 …何も知らない様子で…
 「ねぇ、お姉ちゃんこのあたりで何か変なモノ見なかった?」 
 …罪の無い…無邪気な子供を装って…
 「…そう…例えば…赤い…何かを?」
 …恐らくは…あたしの事を、何も知らないただの人間だと思って…
 「…それ…赤い竜の事?」
 あたしは小さな…微かな声でそう言った…人間には聞こえない位小さな声で…
 …背後にいる存在が人間であれば、確実に聞こえない…その距離で…
 「…知ってるの?」
 …心なしか…僅かに…でも確かにそいつの声に子供らしくない凄みが宿る。

 …あたしは確信する…そいつが何者で、一体何をしに来たのかを。

                                  ―続く―